箕面三中もと校長から〜教育関係者のつぶやき〜

2015年度から2018年度に大阪府の箕面三中の校長を務めました。おもに学校教育と子育てに関する情報をのせています。

授業では思考力を育てる

2020年07月31日 06時24分00秒 | 教育・子育てあれこれ

みなさんが「学校の授業」と聞いたとき、まず連想されるのは、先生が子どもに「教える」を思いつかれるでしょう。

それは、みなさんの多くが、自身が学校で受けてきた授業という経験を通して、授業というものをイメージされるからです。

数ある世の中の仕事の中でも、それがどういう仕事かをいちばんよく知られているのは、学校の先生という仕事です。

なぜなら、学校は義務教育を受けるなかでみんなが経験しているからです。

学校の先生ほど、世の中で、社会で、その仕事がどんなのかを知られている仕事はないのでないかと、私はいつも考えています。

ところが、いま全国で行われている授業、あるいは教師がめざしている授業は、みなさんがイメージされる授業とは、大きく違ってきています。

そのちがいは、いろいろとあるのですが、今回はその中でも一番特徴的な「思考力を育てる」という点で、説明してみます。

わたしは、平素、学校関係者と授業の専門的な話をすることが多いのですが、その内容は、一般の人たちにはなかなか理解されにくいものです。

そこで、一般の保護者の方や業界外の人びとに「思考力を育てる授業」ということを理解してもらえるような説明をします。

そもそも「思考力が育つ」とはどういうことでしょうか。そのために子どもが「よりよく思考する」を考えてみます。

「よりよく思考する」とは、「より多くのことがらや条件を取り込んで考えている」ことです。これを別の表現で言うと、「より深く掘り下げて考えている」ことです。

そしてそれは長年をかけて考えたというのではなく、時間をかけすぎてもいけないのです。

つまり、「思考力が育つ」とは、「より短い時間で、より広く、より深く思考して、結果を生み出すことができるようになること」だといえるでしょう。

では、思考力を授業で育てるには、どうすれば効果的なのでしょうか。

それには、まず子どもたちの意欲を高めることです。

授業の中で、課題に対して「解決したい」という意欲をもたせたり、なぜこれを学習するのかという、その子にとっての必然性がいります。その必然性があれば、主体的に学習に向かうことができます。

そのため、たとえば、「スーパーのレジ袋は有料にすべきか」とう子どもの生活に密着した課題を設定するなど工夫がいります。

ただし、思考は頭の中で行われ、外からは見えません。それを知るためには、思考を「見える化」します。




「有料化すべきだと思います」→「なぜ、そう思うのですか」
→「なぜなら理由が2つあります。一つは、プラスチックごみを減らすためです。二つ目は、レジ袋が本当に必要かを考えることになり、生活の仕方を見直すことになるからです」

「私はプラスチックごみを減らすことないはならないと思います。なぜなら多くの人はレジ袋を、ごみ袋などに再利用しています。レジ袋は丈夫で口をしばることができ、臭いを閉じ込めることもできます。
うちの家では生ごみの袋にしていますし、犬の散歩のとき、フン入れにも使っています。こんな便利な袋が無料で手に入らなくなれば、持ち手のあるゴミ袋を新しく買うようになります。」

授業では、これらの考えをチャートにして黒板に表します。

そうすると、多くの子どもが思考のパターンを学ぶことができます。

たとえば、
「主張は~である。その根拠は~である」
「反対である。その根拠に反対だから」
「共通するのは~である」

このようにすることで、どう考えればいいかわからず「思考停止」に陥っている子に考え方の道案内をすることにもなります。

また、見える化によって、思考の交流や共有もしやすくなります。

この見える化は、小中学校では先生が行う場合が多いのです。

この点で、授業では先生は「教える」という役割よりも、子どもに気づきを生み出し、よりよく思考する学びへ導く「促進役」の役割になるのです。

授業では、基礎基本となる知識や技能は、もちろん教師が「教える」ことになります。

でも、「教える」ことにとどまらず、子どもが「学ぶ」ことへ導いていくのが、授業者としての役割なのです。



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