箕面三中もと校長から〜教育関係者のつぶやき〜

2015年度から2018年度に大阪府の箕面三中の校長を務めました。おもに学校教育と子育てに関する情報をのせています。

人と動物とウイルスの共存・共生

2021年01月08日 08時19分00秒 | エッセイ


私の家の周りは、大阪府のなかでも自然がけっこう多く残っています。家のすぐ近くにまで山が迫っているのどかな風景です。

ところが、近年では、イノシシやシカがよく出るようになりました。

イノシシは雑食性で、野菜や土の中のミミズを掘り起こして食べます。シカは、柔らかい木の芽が好きらしく、一晩にして、木々から出た新芽や葉を食べてしまいます。

私が子どもの頃には、山に住んでいる動物はあまり人里に近づきませんでした。
が、今ではすぐ家の横を歩いていたり、見かけたりします。夜に車で近づくと、すぐ横をイノシシやシカが通ることもあるほどです。

なぜこうなったのでしょうか。

ひとつには、頭数が増え、山の中に木の実や食べるものがなくなったという理由がよく言われます。

私が思う理由はほかにあります。

それは人里と野生動物の住む山の区別がなくなったからと、考えています。

クマが人里へ出てきて人を襲うというのも同様です。

いま日本は、全国的に、農業の後継者が不足し、田んぼを耕作しない家が増えています。

そうすると水田だった土地が荒れてきて、動物にしてもどこまでが山で、どこまでが人里であるかがわからなくなり、すぐ人里まで出てくるようになったのでないかと考えています。

事実、滋賀県のある地域では、動物被害に困り、耕作放棄された田んぼや畑を地域が総出で草や木々を刈りとり、もとの平地にしたら、動物が出てこなくなったというニュースを聞きました。

「田舎暮らし」がトレンドになり、都会から田舎に移り住む人がいます。でもその流入人口と比べ、荒れ地の増加は、農業従事者の高齢化の進展とともに、後継者不足で、現状としては止まらないのです。

こういった現状は、一言で言うと「野生動物と人間の距離が近くなった」ということです。


じつは、このことは、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な流行)にも関係しています。

自然林の乱開発などで、人が野生動物の生息していた地に足を踏み込むようになり、人と動物の距離が近くなりました。

だから、今までなら人が感染してこなかったウイルスに感染するようになっているのです。

ウイルスは本来は野生動物にとどまっていたのですが、新たに宿る生き物を見つけたのです。

もちろん、研究が進み新たなウイルスを発見する技術が進歩したこともありますが、いまその数は確実に増えているそうです。

研究者によると、ウイルスの「生存権」を侵さないことが、今後のウイルス対策で必要なのです。

新たなウイルスが野生動物から人に感染するのは、開発や乱獲で野生動物の生存危機が起こり、ウイルスも生き残りをかけて別の種に乗り換えるからです。

だから、人と野生動物が共存できるようにすれば、ウイルスも人間に移る必要がなくなると、研究者は警鐘を鳴らしています。

新型コロナウイルスが感染拡大する環境や社会構造を準備したのは人間の側です。

生態系への秩序なき進出に加え、グローバル化による人の移動が増えたという「下地」を人間が作ったのです。

なのに、勝手な人間は「新型コロナウイルスに勝とう!」とか「負けない!」と叫んでいます。

ウイルスは抑え込もうとするとかえって進化するとも聞きます。

打ち勝つのではなく、人とウイルスが、相手の領域を侵さず「共生」することだと思います。

私たち人間は、野生動物とウイルスと共存・共生する道を歩んでいくのです。

だからこそ、SDGsでいう、15番目の目標「陸の豊かさを守る」が、いま鮮やかに色づいてくるのです。

15番目の目標には少し詳しくした取り組み項目がついています。

「陸上生態系の保護、回復および持続可能な利用」、「森林の持続可能な管理」、「土地劣化の阻止及び逆転、ならびに生物多様性損失の阻止」。

大阪の田園に住む私には、これらの取り組み項目は大きなインパクトをもって、迫ってくるのです。


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