子どもに学ばせたいことの一つに、「役立ち感」があります。これは自分の行った行為で相手が喜んでくれること、つまり人に貢献する喜びを体験させることです。
人はだれでも、他者にかかわり、他者がありがたいと思ってくれることから喜びを得ることができます。
学校の先生は、児童・生徒にかかわり、子どもが成長したことに無上の喜びを感じます。手のかかる生徒を指導して、卒業時に「先生、ありがとうございました」という一言を聞くだけで、3年間積み重ねてきた努力やしんどさは一度に吹き飛んでしまいます。
お医者さんは、病気を治して、患者さんから「ありがとうございました。おかげで、元気になれました」という言葉を聞くと、貢献感が高まります。
ディズニーリゾートのカストーディアルは、お客さんに対して行ったサービスの結果として、お客さんの感謝する声を聞くとか、喜ぶ顔を見ることでモチベーションが高まります。
このように、人は他者にかかわることを通じて、相手の役に立ったことを実感することで、喜びを感じるのです。
「働く」(=労働)という点で考えてみると、人は他者を喜ばせるために働くのである、というのも一つの見方でしょう。
ただし、これは喜んでもらいたいから人の役に立つ、というような計算がはたらいて、行っているのではありません。なにかのために自分を役立たせたい、という意識を、人は無意識的に、潜在的にもっているのです。感謝の気持ちや役だってよかったという気持ちは、結果としてついてくるものなのです。
子どもたちも同様です。子どもたちは人の役に立ちたいという願いを、本来自分の中に内在させているのです。ただしその願いは、引き出され、トレーニングされないと開花しません。
家庭で、子どもがお手伝いをしてくれたとします。お手伝いという行為は、その願いを引き出すもっとも身近な方法です。「ありがとう、助かったよ」という一言で、子どもは人の役に立つことの喜び(貢献感)や価値を少しずつ知るのです。