音楽関係からの記事はユニークですね。
ほとんどが、彼の実績を数字で追うようなものが多いけれど、こういう記事こそ高橋大輔というスケーターらしい気がします。
引退発表のフィギュア高橋大輔が演じた音楽の軌跡 ヒップホップなど取り入れた革新性を振り返る
2014.10.15.
テレビ局では刈屋アナウンサーだけが、高橋大輔というスケーターが特別である意味をきちんと的確に語ってくれているな、と思います。
海外スケーターやファンのメッセージも目頭が熱くなります。ジョニー、トマシュ、デニス!そして、引退した中村君と佐々木君も。
怪我は当初の報道よりも重症だった。その怪我の名前を聴けば、スポーツ経験者やスポーツ観戦ファンにとってどれほど重症なのかよくわかる前十字靱帯断裂。
それを知った時、「あぁ、もう3Aは跳べなくなるのでは」「日本代表に入るのは難しくなった」「引退するかもしれない」というものでした。
高橋選手のリハビリはテレビで報道され、リハビリ最中に逃げたことも率直に語る。随分、率直だな、と、思ったものですが、実はこの報道を見たテニスの錦織選手もリハビリ中に逃避していたようで、復活に向けて随分力になったと語っていた。カッコよくない姿というのを見せる事は他者への力になることがある。
復帰のフレンズはふわりと降りるジャンプが美しくて、スピンが綺麗になっていて、桜の花びらがはらはらと舞い降りるようなプログラムを微笑みながら見ていました。
「お帰り、よく頑張ったね」という暖かなスタオベが続いた、無欲で応援できると思える始まりでした。
フィンランディア杯で初めてみたFSは決していい演技ではなかったけれど「なんて素晴らしいプログラムだろう」と思い、3Aを降りたことに感激した。
しかし、フィンランディア杯で優勝、メディアはオリンピックの有力メダル候補として大注目。つらいシーズンだったと思う。
スケート・カナダではファンが暖かった。いい出来ではなかった。でも、多くの観客が「お帰り」とスタオベをしてくれた。カナダファンはいつも尊敬する。
全日本までの演技を見て、五輪で入賞するのは難しいと思っていた。ただ、やはり、戻ってきてくれたことこそが嬉しいので、そういう欲はいらないな、と、思っていた。
しかし、バンクーバーでは奇蹟が起きた。本田コーチの靴を借りて、高橋選手は蘇った。eyeは怪我前のような閃光を取戻し、「道」はフィギュアスケートの歴史に残るような素晴らしい演技だった。
他のスケーターのファンには申し訳ないけれど、客観的にみて金メダルは高橋選手か小塚選手が相応しかったと今でも思っている。
、本田コーチが後日、「世界の引退したトップスケーターやメダリストが本当に素晴らしかったのダイスケとタカヒコと言ってくれた」という言葉に「そうだよね、あの「道」や「ギター・コンチェルト」にくそったれな評価をしやがって!」とつくづく思ったものでした。
スイスのメディアはステファンが僅差でメダルを逃したことにショックとしながらも「それは正しいジャッジングだった。」とつづった。
女子の観戦は仲良く男子3人で。この姿を見たとき、「高橋選手と織田選手の間ではコーチ問題はきちんと分かり合えているんだ、二人のことをいたずらに煽るような報道はよくないな」と思ったものです。
五輪後は本当に嬉しくて嬉しくて、すっかり、世界選手権のことを忘れていた。
五輪でいい演技ができても、次の演技はどうなるか分からない。
ここからのくだりは何度も書いているけれど、きっと今回で最後(笑)
でも、ここでもう1つのドラマが待っていた。
期せず、怪我前に作った2つのプログラム、cobaさんはアコーディオンの修業をしていたのは、ここトリノにほど近い場所。そして「道」はイタリアの巨匠フェリーニの名作で、作曲はイタリアの巨匠。ニーノ・ロータ。そして振付師はイタリア人パスカーレ・カメルレンゴ氏。同じ地で練習していたイタリアのアイスダンサーファイレラ&スカリがプログラムが完成していくのを見るのが楽しみだった、と言っていた作品。
海外のスポーツ記事はイタリアの地を味方にしようとして策略を練った、なんて書かれたりするけれど、怪我がなければ違うプログラムを滑っていたと思う。
「eye」で一位。フリーは最終滑走。それは4年前の五輪と同じで、とても運命的なものを感じた。
公式記者会見で4回転回避の可能性も話し、正直ほっとする。「道」は最後にクリーンなものをみたい。
寝起きのポーズから滑走する起動がフリップのものだったので、よかった、3回転だ。と、安心する、が、4F。「え!今、4F!?!?」と、わけのわからぬ状況に体の力が抜けてしまった。それからはイタリア人の観客がこのプログラムを楽しんでいる姿が本当に嬉しかった。
観客席からは長い長いスタンディング・オーベーション。
群衆を映していたカメラワークは切り替わり、観客席の一番遠いところに座り、涙ぐむオレグ氏の横顔を映し出した。その周囲の遠い遠い席の観客もスタオベ。遠くの席のファンさえも立たせるほどの演技だった。
アメリカのテレビではジョニーが時にからかう解説に喰ってかかりながら、高橋大輔の魅力を自分の言葉で延々と語り続けていた。
「道」はドラマチックスケーターと呼ばれる高橋大輔の代表作だと思う。総ての感情と総てのドラマが詰まっている。
正直、4Fが回転不足で3-3が五輪と同じ感じ。最後のスピンはこちらの方がよし、五輪が正しいジャッジだというなら、この演技は五輪と僅差の点数のはず。でも、優勝を確信していた。そして、点数は五輪より10点近く上だった。もう、このジャッジングは信じないと、思った数多い瞬間の1つでした(笑)
高橋選手の目に涙はなかった。
このスケーターは世界王者になれるかもしれない、ヤグディンやキャンデロロみたいなスターになれるかもしれない、という素人ファンの夢を叶えてくれた彼の競技人生の1つ1つの演技や足跡はこちらの予想をはるかに超えた素晴らしいものだった。それは、ローリー・ニコルをスター振付師にした、ミシェル・クワンの存在のように、パスカーレ・カメルレンゴ氏と宮本さんを一気に世界的な振付師に押し上げた。
地上波での生中継はなんと表彰式の直前で終了。日本人男子初の日の丸の掲揚と国歌は放送されませんでした。
そして、EXでは、五輪王者のヴァーチュ&モイヤでもなく、地元のスターのコストナーでもなくお隣のフランスのスターのジュベールでもなく、高橋選手がショーのまとめ役と大トリを任されたのに、なんと、日本のテレビ局はわざわざ、真央ちゃんと高橋選手の順番を入れ替えたのですよ。これは真央ちゃんに対して文句を言っている訳ではありません。日本のテレビ局は最後は真央ちゃんの方が数字が取れる、と、思ったのでしょう。
当時入っていたJ-SPORTSでは高橋選手がイタリアでこの役を任されることがどれだけのことか大きな感慨を持って解説しているのに、某地上波は同じ日本人の高橋選手の果たしたもう1つの快挙をわざわざ手を加えてなかったことにしてくれました。