La douce vie

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「ソロモンの偽証 第三部 法廷 上・下」宮部みゆき

2017-03-28 | book/comic

中学生とは思えない法廷劇を繰り広げる。というのは、証人だけではなく、証拠が重要性と信用性を伴うもので、とても中学生が短期間で得られるとは思えないものが多い。ただ、そこは小説。今までの登場人物である警察、探偵、弁護士、メディアが協力をしてくれてる。裁判自体も教師たちが非常に協力してメディアから彼らを守っている。法廷でのやり取りでは不良3人組の二人が供述をし、三人一組でいるようでいて、実は別の視点があったり、彼らだけが知っている事実があったりする。法廷で語られるとそれが真実かどうか陪審員にゆだねられる。告発状の送り主の発言も然り。裁判を通して、被告や裁判員を担当している中学生たちだけでなく、その親や教師たちも成長していく様が垣間見える。

そうそう、ヤマシンだけは特別かもしれない。彼は部活をせずに武道の道に励み、大出という不良の抑止力となる。ヤマシンがいなければ、この裁判は大出の怒号1つで萎縮したものになったかもしれない。ヤマシンは目立たず、他の中学生たちよりもさらに高い次元にすでにいて、同級生たちは初めて彼の責任感の強さや律儀さを垣間見ることになる。

読んでいると、元校長の行動や決断は納得のいくものだけれど、報道というフィルターを通せばそれは同じように映らない。そして、納得のいくと思っていた行動も本当に正しかったのか、という疑問も出てくる。最後に数人の将来が描かれているけれど、もっと他の教師だったり、生徒たちのその後はどのようになったか描いてくれたらなぁ、と思った。宮部さんなら描けるだろうから。

それと、以前から宮部さんの作品の中で女性の登場人物(主役級ではない人かな???)の言葉づかいが少し古いと感じていたのですが、今回は女子中学生がイマドキっぽい言葉も使っていたり、それだけじゃなくて、そんな丁寧な言葉で話さないところも現実に近いかな、と思いました。(ただ、私自身、現在中学生からはかなり歳が離れてしまったので、イマドキの子供の言葉づかいをわかっているわけではない。)