モリモリキッズ

信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

酔いどれかぐや姫は蛾の娘?(北信濃里山通信)

2009-10-10 | アウトドア・ネイチャーフォト
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 日本は「かぐや」ですが、中国の月面探査衛星の名前は「嫦蛾」といいます。古代中国の神話に「嫦蛾月に走る」というのがあります。中国では月にはうさぎではなく、蛾や蟾蜍(ヒキガエル)がいるのです。

 「嫦蛾」は「ゲイ」(羽の下に廾)という神様の妻でした。ゲイは弓の名手で、10個あった太陽のうち9個を撃ち落したといいます。それを太陽の母、義和が怒り神様に訴えたのでゲイは下界に落とされたのです。

 ゲイは天界に帰るべく西王母(西方の崑崙山に住むという不老不死の力を与える神女)に仙薬もらいます。この薬は、二人で分けて飲めば不老不死になるだけ。一人で飲めば天界に戻って神になれるというもの。妻の嫦蛾が夫を裏切り、一人で飲んでしまいます。嫦蛾は天界には躊躇して行かなかったけれども、仙人となって月に走り、やがて夫を裏切った罪で月に閉じこめられてヒキガエルとなったといいいます。

 その後ゲイは、功名心を持った家僕の逢蒙という弟子に裏切られ、弓で射殺されました。これでは余りにも悲惨だということで……。満月の夜に団子を供えて、嫦蛾の名を三度呼ぶと、嫦蛾が月から戻ってきて再び夫婦として暮らしたという余話が付く場合もあるそうですが、いずれにしても悲劇の英雄です。月見の風習はここから始まって日本に伝わったとか。竹取物語もこの話が下敷きのひとつかもしれません。だとするとかぐや姫は、蛾の娘、いやヒキガエルの娘ということになりますか。

 かぐや姫の歌に『酔いどれかぐや姫』という名曲?がありますが、長男が保育園の頃にこの曲がお気に入りで、「シャ~ララ~、シャ~ララ~」という部分を繰り返し繰り返し歌っていました。アルバムには、他に「町のうわさのかぐや姫」「妻という名のかぐや姫」「ひとり寝のかぐや姫」「たそがれのかぐや姫」「天国のかぐや姫」が収録されていました。

 中国の美人の形容に「蛾眉」というのがあります。 蛾の触角(細く櫛形)のような美しい弧を描いた眉をしている人が美人の条件でした。
 中華の薬膳料理に使われる冬草夏虫というとても高価なキノコがあります。蝙蝠(コウモリ)蛾の幼虫に菌が寄生してできる摩訶不思議なキノコで、薬効が非常に高く不老不死の食材とされています。

 オオミズアオ(大水青蛾)という妖艶な蛾がいます。わりと町中にも多く、都内でも街灯に飛んできて留まっているのが見られます。欧州では「月の女神」と呼ばれる蛾です。昼間電柱に留まっているオオミズアオを見つけて、女子高生が「キャーッ!なにこれ!?」と叫んでいたことがあります。
 ホシシャクは、夜街灯に集まる蛾の一種ですが、日中も見られます。まるで空中を彷徨うように舞う姿は儚げで幻想的ですらあります。白いはねに小さな水玉模様とスモーキーブルーの目が印象的な蛾ですが、昼間見ると弱々しく飛ぶモンシロチョウという感じです。

 日本において蛾は昔、「ひむし・ひひる・ひひるは」ともいました。火虫ですね。「飛んで火にいる夏の虫」です。「ひひるは」は「蛾葉」のこと。紗(薄衣・薄絹)を表す言葉としても使われました。

「宵の間も はかなく見ゆる 夏虫に 惑ひまされる 恋(こひ)もするかな 」 紀友則 『古今和歌集』

★ネイチャーフォトは、【MORI MORI KIDS Nature Photograph Gallery】をご覧ください。キノコ、変形菌(粘菌)、コケ、花、昆虫などのスーパーマクロ写真。滝、巨樹、森の写真、特殊な技法で作るパノラマ写真など。トレッキング・フォトルポにない写真もたくさんアップしました。
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