モリモリキッズ

信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

紫占地と信濃柿(妻女山里山通信)

2009-10-26 | アウトドア・ネイチャーフォト
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 雨が降っていないので、期待もせずにきのこ狩りへ。季節は時候坊から紫占地、栗茸、剥茸などに移りつつあるのですが、雨が降らないばかりか最低気温が高いので川中島名物の深い霧もほとんど発生しません。雨が降らなくても霧がまけば露に濡れてきのこは出ます。それもないとなるときのこの発生は望み薄。それでもと、前回小さな紫が出ていたとっておきの場所へ。山道からはずれて藪こぎをします。

 当日はきのこ狩りの人が幾人も入っていたため、熊鈴はつけません。その代わり周囲の状況にはいつもより注意をはらいます。前回出始めていたところは、きのこが消えていました。乾燥で成長できずに朽ちてしまったようです。こういう時は頭を使います。紫の好みそうな場所をピンポイントで探します。シロが見つかればこっちのものです。紫占地のシロは、淡い紫色でそれはそれは美しいものです。

 見つけたシロは、雨がないにもかかわらず大きく成長していました。そしてその周りには紫の菌輪ができています。数十本近くはありそうです。しかし、小さい。大きなものも乾燥で軸が割れています。天気予報ではこの後も雨が望めそうにないので、小さなものも採ることにしました。ある場所で採っていると、下から笛と声が聞こえてきました。シロが見つかってはまずいので、そそくさとその場を離れます。午前中いっぱい山中を駆け回り、なんだかんだで結局114本の紫が採れました。不作の年にしてはまずまずの収穫です。

 紫占地は、本当に美しい藤色をしています。焦茶色ばかりの濡れ落ち葉の中にたたずむ乙女というところでしょうか。ただこの乙女は生で食べると中毒します。おまけに乙女は成菌になると必ずお腹にウジ虫を飼っています。ショウジョウバエや小さな甲虫の幼虫などですが、紫占地には頭の尖ったオレンジ色の幼虫がいます。食べても害はないのですが、縦に割って取り除きます。野生のキノコの場合、虫はつきものなので、絶対にいやだという人は食べないほかありません。またこの乙女は華奢で壊れやすいので優しく扱わなければなりません。実に面倒な乙女です。

 東京や神奈川、山梨の山でも紫占地を採りましたが、どうも栄養にしている落ち葉の種類で味が変わるようです。土臭いからいやだという人もいるのですが、当地の紫は関東のものに比べて土臭さがあまりないように思います。食べ方は、豆腐と澄まし汁に。紫の美味しい出汁の味が一番堪能できる料理です。他には炊き込みご飯、きのこうどん、オムレツ、ピクルス、グラタンなどなど。色々なきのこを入れてきのこ鍋にも。欧州では栽培もされているきのこです。

 ほかに剥茸、時候坊なども採れて帰り始めると、峠で信濃柿がたわわになっているのを見つけました。豆柿とか小柿、葡萄柿といわれるもので、実の直径が2センチぐらいしかありません。よく色づいたものを食べると甘い味がしました。やや渋みがあります。霜が降りて黒くなると干し柿のような濃厚な味になります。昔は柿渋を採取するために栽培されたようです。錦秋に近づいた山道を下ると、台風が近づいてきたせいでしょうか、黄色く色づいた壇香梅の葉がさやさやと音を立てて揺れ始めました。

「紫の薄絹纏ふ 乙女らの 秘して虫飼う 誰ぞ知るらむ」   風林

★きのこ料理は、MORI MORI RECIPE(モリモリ レシピ)をご覧ください。色々あります。

★ネイチャーフォトは、【MORI MORI KIDS Nature Photograph Gallery】をご覧ください。キノコ、変形菌(粘菌)、コケ、花、昆虫などのスーパーマクロ写真。滝、巨樹、森の写真、特殊な技法で作るパノラマ写真など。トレッキング・フォトルポにない写真もたくさんアップしました。
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