エルニーニョによる異常気象でしょうか、信州北部では夏に雨が多く夏キノコは全盛でしたが、9月に雨がほとんど降らず秋のキノコは大不作が続いています。松茸園でも閉園するところが出ているほどです。晩夏に妻女山も幾度かの豪雨と、台風18号で80ミリという前例のないほどの雨に見舞われたため、落葉松の枯葉などの堆積物が流され表土が露出し、キノコが出なくなってしまった森もあります。豪雨と突風で倒木や掛かり木も増えました。非常に危険な状態になっているところもあります。
それでもたまに訪れる人や観光客は、何事もない普通の秋の里山に見えることでしょう。つぶさな観察と自然に対するリテラシー(読解力)がなければ、山の異常は全く見えてこないのです。そういうのを、作家のC.W.ニコルさんは、「自然音痴」といっていました。異常が見えてこない。異常に気がつかない。これは怖いことです。
そんな某日、某山へないとは思いつつ熊鈴を鳴らしながらキノコ狩りに出かけました。確かに不作でしたが、今まで出たことのない斜面に大量の時候坊が出ているなど、例年とは違うパターンが見られました。そんなキノコ狩りの最中に連れと待ち合わせをしていると、携帯が鳴って近くにいることが判明。山中でこれは便利です。そして、合図にホーッと声を挙げて位置を知らせました。すると全く別な方向からホーッと返事が返ってきました。
驚いてその方向を見ると、男性がひとり登ってきました。山菜採り用のフックを杖代わりにしていかにもプロという感じのいでたちです。その辺りの山に詳しそうなので、ひとしきり山談議に花を咲かせました。すると、この辺りの標識を作って立てている人だというではないですか。私のブログ記事「五量眼塚古墳は間違い!斎場山古墳です!」の標識を作った方です。これにはお互いにビックリ。なんという奇遇でしょう。
Mさんといいますが、史跡保存会や自然を守る会に入っていて、標識は個人的に作っては設置しているとのこと。その労力は大変なもので、敬意を表したいところですと申し上げました。であればこそ、斎場山の標識の件は残念なのですと。Mさんも検索で私の記事を読み、これはお詫びをしなければいけないかな、どうしたものかなと思われていたそうです。
斎場山古墳の命名については、くだんの記事「五量眼塚古墳は間違い!斎場山古墳です!」を読んでいただくとして、Mさんは斎場山古墳の標識も作りますというお言葉をいただきました。五量眼塚古墳はそのままに。これは、同じ場所を示す、龍眼塚、竜眼塚、両眼塚、床几塚、謙信台などと同様に里俗伝というものなので、正式名称にはなり得ないものですが、これはこれで文化財的価値のある自然地名なのです。
森の中の立ち話でしたが、思いがけない出合いで、気にかかっていた事が解決し、その辺りの山情報や歴史情報などもたくさん得ることができました。MさんとMさんに出会わせてくれた山の神に感謝です。
★妻女山(斎場山)について研究した私の特集ページ「「妻女山の真実」妻女山の位置と名称について」をぜひご覧ください。武田別働隊の経路図、きつつき戦法の検証、上杉謙信斎場山布陣図などもご覧いただけます。
★五里ケ峯・鏡台山のトレッキングを、フォトドキュメントの手法で綴るトレッキング・フォトレポート【MORI MORI KIDS(低山トレッキング・フォトレポート)】にアップしました。山本勘助の軍道、通称「勘助道(勘助横手)」は必見です。どうぞご覧ください。