信州が今年最高気温の34度近くになった午後に妻女山に寄ってみました。林道を歩き始めると思いのほか西風が強くて気持ちがいい。三光鳥の「ホイホイホイ」という鳴き声に聞き惚れていると、足下でバサバサと音が。なにかなと見下ろすが何も眼に入らないのです。
不思議に思ってしばらく静止していると、またバサバサと。山藤の幼木の葉の裏側からオオムラサキの大きな眼が見えました。激しく羽撃きながら葉に乗りました。その姿は明らかに異常でした。
前翅も後翅も半分以上ないのです。オオムラサキのメスが羽化し始めたのは、ここ2、3日ですから、羽化したてでニホントカゲかニホンカナヘビに襲われたのでしょう。それでもこれだけ翅を食いちぎられてよく無事だったものです。オオムラサキの成虫の天敵は、他に鳥やクモなどがいますが、オオムラサキは縄張り意識が強く、自分より大きなヒヨドリやツバメを追い回す追尾行動もよく見られます。
このオオムラサキは、下の斜面から上がって来たようなので、地面で獣の糞を吸っている時かなにかに襲われたのかもしれません。コナラなどの樹液は、まだ出初めで少ないため、地面の獣の糞や落ちた果実の発酵したものを吸うのです。水分を補給するために下りることもあります。樹上で樹液を吸うのに比べると、地上での行動は遥かに危険が伴うはずです。
最初の写真は、葉の上から下りて林道を歩き始めたところ。3枚目は、飛び立とうと激しく羽撃いたところ。当然、1センチも飛べません。それでも、諦めずに何度も何度も羽撃くのでした。羽撃いているうちに、右の前翅が付け根から取れてしまいました。
羽撃いた瞬間にひっくり返ってしまいましたが、すぐに戻りました。野生生物は、命尽きる瞬間まで諦めずその時の100パーセントの力を出すものなのです。
4枚目。翅を広げたところで、初めてメスだとはっきり分かりました。5枚目。どこへ行こうとしているのか。林道をとぼとぼと歩いていきます。そのまま、草むらに消えました。樹上からは鳴き始めたヒグラシの鳴き声が、木漏れ日と共に降り注いでいました。
あのメスの命はそう長くはないでしょう。オオムラサキは、羽化してから約ひと月の命ですが、それさえ全う出来ずに命が絶えて行く個体も実は少なくありません。その日も、ちぎれたオスの翅1枚を見ました。それが自然の営みなのです。
長坂峠に出ると、いつも一番真っ先に樹液が出るコナラにハナムグリが。そこへキアシアシナガバチがやってきて、最初は横に並んで片を組む様な形で樹液を吸おうとしました。しかし、樹液が出ている場所が小さく上手く吸えないため、あちこちに移動したりホバリングしたり。そして、ついにはハナムグリの上に乗って頭の上から樹液を吸いだしました。ハナムグリは、全く動じることもなく吸い続けています。そんな様子を小さなムモンホソアシナガバチが遠巻きに見ていました。
この樹液バーは、私が手鋸で傷をつけた人工的なものです。カミキリムシの幼虫が穴をあける以外に、昔は木山といって薪をとったり、枝打ちや除伐を盛んにしたので、樹液が出る木はたくさんありました。近年、山の手入れをしなくなったことに加えて、当地では千曲市による松枯れ病対策での農薬の空中散布のために、カミキリムシが減少していることが考えられ、樹液を出す樹木が激減しています。そこで、人工的に樹液バーを作っているのです。
手鋸で横に傷をつけると、穴をあけるより樹液が沢山出るので、より多くの昆虫達が樹液を吸える様になります。樹液は秋口まで出続けますが、やがて樹木の自然治癒によって導管が塞がれ、樹液は出なくなります。導管のルートが他にできるのです。枝落としをした箇所も節になって塞がれます。
コナラの7、8m上の方では、自然に出始めた樹液をスズメバチが吸っていました。オスのオオムラサキが飛んで来て留まろうとしましたが、スズメバチに追い払われてしまいました。今年もオオムラサキとスズメバチのバトルが始まります。
榎のあるオオムラサキの谷では、たくさんのオオムラサキが舞ってました。オスだけだった先週とは違い、遅れて発生したメスもたくさん加わって森はとても賑やかになりました。アオカナブンやカブトムシ、ミヤマカミキリなどはまだ発生していません。彼らが出てくると、樹液バーは大混雑します。
■生物と核
地球の年齢は46億年です。約39億年前に海ができて原始生物が誕生しても、地球は太陽や雨中からの放射線や宇宙線が降り注ぎ、陸上で生物が棲める環境ではありませんでした。誤解を恐れずに言えば、太陽は最も巨大な原発であり原爆なのです。
5.5億年前に海藻が酸素を大量に作り始め、オゾン層ができて、やっと陸上で生物が生きられる環境が整いました。
そして、人類が誕生したのがわずか450万年前。地球の歴史を1年とすると、人類の歴史はたった8時間余り。その人類が、膨大な時間をかけてやっと生物が棲める様になった地球を、自ら放射能で汚しています。原発=原爆=核は、生物学的には、最も反動的なものなのです。
不思議に思ってしばらく静止していると、またバサバサと。山藤の幼木の葉の裏側からオオムラサキの大きな眼が見えました。激しく羽撃きながら葉に乗りました。その姿は明らかに異常でした。
前翅も後翅も半分以上ないのです。オオムラサキのメスが羽化し始めたのは、ここ2、3日ですから、羽化したてでニホントカゲかニホンカナヘビに襲われたのでしょう。それでもこれだけ翅を食いちぎられてよく無事だったものです。オオムラサキの成虫の天敵は、他に鳥やクモなどがいますが、オオムラサキは縄張り意識が強く、自分より大きなヒヨドリやツバメを追い回す追尾行動もよく見られます。
このオオムラサキは、下の斜面から上がって来たようなので、地面で獣の糞を吸っている時かなにかに襲われたのかもしれません。コナラなどの樹液は、まだ出初めで少ないため、地面の獣の糞や落ちた果実の発酵したものを吸うのです。水分を補給するために下りることもあります。樹上で樹液を吸うのに比べると、地上での行動は遥かに危険が伴うはずです。
最初の写真は、葉の上から下りて林道を歩き始めたところ。3枚目は、飛び立とうと激しく羽撃いたところ。当然、1センチも飛べません。それでも、諦めずに何度も何度も羽撃くのでした。羽撃いているうちに、右の前翅が付け根から取れてしまいました。
羽撃いた瞬間にひっくり返ってしまいましたが、すぐに戻りました。野生生物は、命尽きる瞬間まで諦めずその時の100パーセントの力を出すものなのです。
4枚目。翅を広げたところで、初めてメスだとはっきり分かりました。5枚目。どこへ行こうとしているのか。林道をとぼとぼと歩いていきます。そのまま、草むらに消えました。樹上からは鳴き始めたヒグラシの鳴き声が、木漏れ日と共に降り注いでいました。
あのメスの命はそう長くはないでしょう。オオムラサキは、羽化してから約ひと月の命ですが、それさえ全う出来ずに命が絶えて行く個体も実は少なくありません。その日も、ちぎれたオスの翅1枚を見ました。それが自然の営みなのです。
長坂峠に出ると、いつも一番真っ先に樹液が出るコナラにハナムグリが。そこへキアシアシナガバチがやってきて、最初は横に並んで片を組む様な形で樹液を吸おうとしました。しかし、樹液が出ている場所が小さく上手く吸えないため、あちこちに移動したりホバリングしたり。そして、ついにはハナムグリの上に乗って頭の上から樹液を吸いだしました。ハナムグリは、全く動じることもなく吸い続けています。そんな様子を小さなムモンホソアシナガバチが遠巻きに見ていました。
この樹液バーは、私が手鋸で傷をつけた人工的なものです。カミキリムシの幼虫が穴をあける以外に、昔は木山といって薪をとったり、枝打ちや除伐を盛んにしたので、樹液が出る木はたくさんありました。近年、山の手入れをしなくなったことに加えて、当地では千曲市による松枯れ病対策での農薬の空中散布のために、カミキリムシが減少していることが考えられ、樹液を出す樹木が激減しています。そこで、人工的に樹液バーを作っているのです。
手鋸で横に傷をつけると、穴をあけるより樹液が沢山出るので、より多くの昆虫達が樹液を吸える様になります。樹液は秋口まで出続けますが、やがて樹木の自然治癒によって導管が塞がれ、樹液は出なくなります。導管のルートが他にできるのです。枝落としをした箇所も節になって塞がれます。
コナラの7、8m上の方では、自然に出始めた樹液をスズメバチが吸っていました。オスのオオムラサキが飛んで来て留まろうとしましたが、スズメバチに追い払われてしまいました。今年もオオムラサキとスズメバチのバトルが始まります。
榎のあるオオムラサキの谷では、たくさんのオオムラサキが舞ってました。オスだけだった先週とは違い、遅れて発生したメスもたくさん加わって森はとても賑やかになりました。アオカナブンやカブトムシ、ミヤマカミキリなどはまだ発生していません。彼らが出てくると、樹液バーは大混雑します。
■生物と核
地球の年齢は46億年です。約39億年前に海ができて原始生物が誕生しても、地球は太陽や雨中からの放射線や宇宙線が降り注ぎ、陸上で生物が棲める環境ではありませんでした。誤解を恐れずに言えば、太陽は最も巨大な原発であり原爆なのです。
5.5億年前に海藻が酸素を大量に作り始め、オゾン層ができて、やっと陸上で生物が生きられる環境が整いました。
そして、人類が誕生したのがわずか450万年前。地球の歴史を1年とすると、人類の歴史はたった8時間余り。その人類が、膨大な時間をかけてやっと生物が棲める様になった地球を、自ら放射能で汚しています。原発=原爆=核は、生物学的には、最も反動的なものなのです。





