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信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

山手線や新幹線を動かすJR東日本の信濃川発電所の宮中取水ダムへ。宿は野沢温泉へ(妻女山里山通信)

2021-06-09 | 歴史・地理・雑学
 十日町市博物館を後にして向かったのは、山手線や新幹線を動かすJR東日本の信濃川発電所の宮中取水ダム。

 宮中取水ダムは昭和14年に新潟県十日町市(旧中里村)に建設され、沈砂池で土砂を沈殿させた後、水路トンネルを通り調整池に入り、電力の需要に応じて千手発電所、小千谷発電所、小千谷第二発電所へ送水され、発電が行われています。千手・小千谷・新小千谷の合計最大出力は44万9,000キロワットで、JR東日本で消費する電力量の4分の1に当たります。この電力で、上越線や首都圏の山手線、東北・上越新幹線などの電車を動かしています。

 昨年の10月に訪れた時は、一番向こうの三つしかゲートが開いていませんでしたが、今回は前日に大雨が降ったのですべて開いていました。水も濁っていて轟音が響きます。幅は、330.8メートル。重力式のコンクリートダムです。

 JR信濃川発電所管内鳥瞰図。訪れたのは、一番左上の宮中取水ダムです。小千谷発電所までは水路トンネルで運ばれます。

 水圧がかかっているので、もの凄いスピードで流れていきます。すごい迫力でゾワゾワします。

 大雨で大量の流木やゴミが流れ着いています。綺麗なサッカーボールはどこから流れてきたのでしょう。ペットボトルなどプラスチックゴミが多いですね。

 昔はこの魚道がなかったので、信州まで鮭が遡上しなくなりました。ダムができる前は、秋になると上田や松本まで数万匹の鮭が遡上したそうです。2010年より中魚沼漁業協同組合の協力のもと、「新潟水辺の会」との共催により、宮中取水ダム下流河川敷でサケの稚魚の放流を実施しているそうです。しかし、上流にある東電の上流の西大滝ダムがネックになっているようです。千曲市の土口水門で、鮭が釣れたという話は聞かないですね。ここでも東電が癌ですか。

 ダムは二酸化炭素(CO2)を排出しないクリーンエネルギーとして、その存在意義はますます高まっています。田中康夫元県知事が脱ダム宣言をしましたが、不要なダムだったり、経費の捏造だったりゼネコンの利権の温床になっていたからです。環境的に造ってはいけないダムは、海外では爆破されたりしています。ただ、治水や灌漑、発電で必要なダムもあるのです。少なくとも原発より遥かに安全でクリーンです。

 取水口のゲート。このじぶたれた感じがなんともいい。

 沈砂池。ここで土砂を沈殿させた後、圧力トンネルで発電所に送ります。

(左)宿泊地の野沢温泉に向かいます。温泉街の最上部にある麻釜。昔は麻を茹で皮を剥いたので麻釜と。現在は卵を茹でたり野菜を洗ったり。(右)共同浴場の大湯。共同浴場はあちこちにあります。

(左)この後、健命寺に行ったのですが、それは次の記事で特集します。その道すがらにあったカラムシ(苧麻)の群生地。縄文人は、これの繊維を使って布を織っていました。(右)宿泊した清風館の風呂。相当古いです。浴槽は男湯はひょうたんの形。内装はボロボロで、鏡や照明が変なところに付いてます。お湯は熱めですが最高です。
 ところで、この宿は長野県民割で予約したのです。他の高級旅館はすべて売り切れていました。ところが、レベルが3に下がったのに、長野県はこの県民割を無期限延期にしたのです。我々は清津峡に行くことを決めていたので、割引がなくても予約しましたが、周りの旅館、特に高級旅館はキャンセルの嵐だったでしょう。実際に歩いてみると、長野県ナンバーはなく、県外ナンバー(首都圏も)ばかりでした。それも少なめで温泉街は閑散としていました。本当に長野県は阿部県知事は何を考えているのでしょうか。宿泊業者や土産物店は、カンカンでしょう。

(左)夕食です。高級旅館みたいにお品書きの付くお洒落な会席料理ではありませんが、仕出しではなく手作りです。馬刺し、カレイとキノコのホイル焼き、油揚げの山菜チーズ焼き。小田巻き蒸し。豚しゃぶ。蕎麦サラダ。和え物。野沢菜漬け。(右)根曲がり竹の焼き物とワラビ。これにヤマウド、タラの芽、山葡萄の葉、コシアブラの天ぷら。お腹いっぱいでご飯はキャンセルしました。

(左)朝食です。この時期の信州の定番、根曲がり竹とサバの水煮と玉ねぎの味噌汁。ハムとサラダ。サバ塩焼き。ヤマゴボウの漬物と梅干し。ヤマウドの和え物。ナメコと舞茸のおろし和え。豆腐サラダ。温泉卵。焼海苔。メロン。充分すぎる量です。味噌汁とナメコと舞茸のおろし和えが美味でした。(右)向こうの二人は二日酔いか?

(左)翌朝。清風館の裏側です。いい感じに鄙びています。(右)麻釜の隣の土産物屋。彼は塩漬けのコゴミを買いました。私は古漬けの野沢菜漬けを。もう色が変わって乳酸菌たっぷりです。このすんき漬みたいになった酸味のある野沢菜漬けが大好きです。そのままで。蕎麦にのせて。炒めてチャーハンに。おやきの具に。ここの亭主が、観光客もいないので暇だからとどくだみ茶をごちそうしてくれました。野沢温泉の最近の裏話をしてくれました。勉強になりました。ゼンマイは100グラム2000円以上と高価ですが、その理由も分かりました。この下にある土産物屋より自家製の希少なものが売られています。秋はキノコが並ぶでしょうね。オススメ。

(左)野沢温泉を愛した高野辰之記念のおぼろ月夜の館に寄りました。彼の書斎の復元。(右)ステンドグラス。「春がきた」「春の小川」「紅葉」「故郷」「朧月夜」と、彼の小学唱歌は、ほぼ誰もが歌えますね。

(左)小布施に向かう途中で中野に立ち寄りました。古い商店街で見つけたカクアゲ商店。味のある素晴らしいお店です。銚子産のサバの水煮缶詰が3つで499円。大きな切身の三種の魚の粕漬けが500円。お持ち帰りの海鮮丼も魅力的でした。また訪れたい。(右)昼は、近くの金太楼で。私はあんかけ揚げ焼きそばを。無化調でやさしい旨味のあるやきそばでした。地元の常連の人は、皆味噌ラーメンを頼んでいました。一番安くて一番早く出てきます。味もいいのでしょう。さて、北斎館に向かいましょう。

JR東日本信濃川発電所・東京電力信濃川発電所。都民はこれがないと通勤通学も生活もできません 2020(妻女山里山通信)

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本の概要は、こちらの記事を御覧ください

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国宝「火焔型土器」と超有名な重文「遮光器土偶」が国内初共演:十日町市博物館(妻女山里山通信)

2021-06-09 | 歴史・地理・雑学
 清津峡渓谷トンネルを後にして、本格的な博多豚骨ラーメンの「天池屋」で昼食。その後、新館オープン1周年記念の特別展が開催されている十日町市博物館へ向かいました。
「形をうつす」ー文化財資料の新たな活用ーというテーマで、7月4日(日)まで開催されます。縄文時代は、13000年くらい前から2300年くらい前まで。世界史でも1万年も続いた文明は稀有なものです。決して未開な原始時代ではなく、優れた技術や精神性を持った成熟した文明でした。この前の旧石器時代が分かる、野尻湖畔のナウマンゾウ博物館も超オススメです。

 国宝指定番号4 火焔型土器(深鉢形)笹山遺跡 縄文時代中期。火焔型といいますが、四方に突き出ている突起物は、鶏頭冠突起と呼ばれます。考古学者の大島直行著『月と蛇と縄文人』では、「縄文土器は鍋として作られたものではなく、第一義的にはあくまで「月の水」を集めるという役割を担った祭祀道具の一つとして作られたのだ」と述べています。確かに触れるレプリカを触ってみると、日常使いにはとても不便な形です。何か呪術的な儀式に使われたのでしょうか。

(左)国宝指定番号6 火焔型土器(深鉢形)笹山遺跡 縄文時代中期。(右)国宝指定番号11 火焔型土器(深鉢形)笹山遺跡 縄文時代中期。よく残っていたと思います。日常使いの土器もあったのでしょうか。縄文土器でアマモと海水を煮詰めて塩を作ったそうですが、その時はシンプルなもので、一回で駄目になってしまうそうです。日常使いの土器は、おそらくシンプルな形で、ヒビが入ったり割れると壊して捨てたので残っていないのでしょう。

(左)十日町市博物館。雪の結晶のパンチングメタルの爽やかな外観。(右)国宝展示室。

(左)国宝指定番号21 深鉢形土器 笹山遺跡 縄文時代中期。(右)国宝指定番号3 浅鉢形土器 笹山遺跡 縄文時代中期。装飾的ですが、日常使いできる形です。料理を盛り付けて皆で食べたのでしょうか。あるいは特別な日の器か。

 国宝指定番号1 火焔型土器(深鉢形)笹山遺跡 縄文時代中期。鶏頭冠突起の下部には、水流の渦の様な文様が見られます。「月の水」を集めるの意味が込められているのでしょうか。精巧なレプリカがあり触ることができます。上部のカーブなどは指がちょうどはまるサイズで、手びねりの制作過程が想像できます。

 縄文土器の全国分布図。火焔型土器だけでなく、山梨県釈迦堂遺跡のものとか、長野県の曽利遺跡のものなど、驚嘆すべき造形美です。それぞれに交流があったのだなと分かります。信州和田峠の黒曜石が、青森や北海道まで流通していましたから。

 最も有名な土偶、重要文化財の「遮光器土偶」。本当に遮光器なのかも実は分かっていません。そのあまりに特異な形から宇宙人説まで飛び出しました。縄文人の豊かな感性、想像力と創造力に感服します。頭髪はもちろん、着ている服の文様も、我々が知っている縄文人のそれとは違います。なにか非常に特別なものなのでしょう。呪術師の出で立ちでしょうか。

 土偶の移り変わり。ドイツの日本学者、ネリー・ナウマンの最後の著者「生の緒―縄文時代の物質・精神文化」では、「土偶は女神」とする日本の考古学者の解釈は根拠が乏しいとし、縄文人は満ち欠けによる姿を変える月を「死と再生」になぞらえたと考え、そこに呪術宗教的な価値を見出したのだと指摘。てっぺんがお盆状や皿状のこうした容器が、中国や中近東、アメリカなどの牡牛や牡羊の左右の三日月の角がつくる湾曲した形と同様に、月の水を集める容器そのものと考えられることから、土偶の顔自体が月の象徴とみなしている。
 野尻湖畔のナウマンゾウ博物館には、旧石器時代の人がヘラジカの角で星を、ナウマンゾウの牙で月を表した呪術的な造形が残っています。太陽は命の源を、満ち欠けする月は命の始まりと終わりを象徴するものだったのでしょうか。

(左)常設展の「織物の歴史」。原始機。(右)美大時代に私も使ったことがある機織り機。我が家にもあり、祖母や母が、機を織っていました。奥は、機械化した機織り機。

(左)草木染のサンプル。左上から、アカネ、コナラ、ベニバナ、ヤマウルシ。左下から、ハンノキ、コブナグサ、ヌルデ、キハダ。(右)現代でも充分に通用する明石縮。

(左)昭和初期のポスターや表紙。(右)十日町の織物宣伝ポスター。着物を買っていすゞ・ベレットが二台当たるというもの。1963年(昭和38​年)から1973年(昭和48年)まで製造された名車です。

(左)先染めの糸二色を使って織られた生地。この柄は、どうやって織るのでしょう。図案が頭に入っているのでしょうか。縞や格子模様なら分かるのですが。ムサビでは造形学部工芸工業デザイン学科でテキスタイル専攻。一応織物もやりましたが、シルクスクリーンが専門。但し、社会人になってからは出版関係のアートディレクターやデザインプロデューサーになったので、テキスタイルのプロではありません。しかし、これは凄い。(右)常設展の「雪と信濃川」。赤ん坊がつぐらに入っています。記憶にはありませんが、私も入っていたそうです。

(左)雪と暮らす道具の色々。(右)江連舫(こうれんぼう)の12分の1模型。これで信濃川を行き来したのでしょう。

(左)越後妻有里山現代美術館[キナーレ]。現在は、大地の芸術祭2021に向けた展示室の改修に伴い休館中です。(右)道の駅クロス10の売店に吊るされた巨大な吊るし雛。今回は、魚沼酒造の天神囃子の純米酒と猪のピスタチオ入りハムを買いました。この後、皆をJR東日本信濃川発電所に案内。それは次の記事で。

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