旅館にチェックインして皆を案内したのは、麻釜のすぐ上にある薬王山健命寺。永禄11年(1568年)創建の曹洞宗の古刹です。越後市振村(現糸魚川市)出身の宮大工、名工・北村喜代松の見事な木彫が見られます。喜代松22歳の嘉永4年(1851)には、鬼無里の諏訪神社屋台を手掛けています。これは必見です。私は、北村喜代松の宮彫りを求めて、松代から野沢温泉、新潟県の上越市、糸魚川市、富山県の朝日町へと撮影の旅をしてきました。右上のブログ内検索で「北村喜代松」で検索してください。当該記事がご覧いただけます。
●宮彫りの名工・北村喜代松の木彫を求めて行脚の旅=その3 野沢温泉健命寺と湯沢神社(妻女山里山通信)2020.8.11
健命寺において彼の宮彫りは、薬師堂で見られます。薬師堂は、北村喜代松と息子の北村四海の作。祀られている薬師瑠璃光如来は上杉謙信の陣中守り本尊と伝わっています。薬師堂正面1間唐破風向拝の北村喜代松作の龍の木彫。木目を極限まで活かしているのが分かります。口、鼻、耳の中に丹塗(ベンガラ)の赤が見えます。これを一本の欅から彫り出しているのですから。
薬師堂は2層宝形造。とにかく造形に一ミリのスキもありません。構成とそのバランスが素晴らしい緊張感を醸し出しています。頭貫には波と亀、さて何匹いるでしょう。9匹までは数えたのですが。
鳳凰。木目が縦に通っているところはいいのですが、横になっているところは弱いわけで、ギリギリの太さにしているのでしょう。造形にも工夫が見られます。
左の木鼻の貘(ばく)と唐獅子。貘は、悪夢を食べてくれるという、中国の想像上の動物。鼻は象、目は犀、尾は牛、足は虎で、体形は熊に似るという幻獣です。
右の木鼻の貘と唐獅子。よく見ると左右で厳密に同じ造形ではないことが分かります。
左の手狭には雀を追う若鷹。喜代松のお得意の題材です。
右の手狭にも雀を狙う若鷹。逃げる二羽の雀。これも一本の欅から彫り出しています。
(左)頭貫上の龍の腹部。木目が美しい。龍が爪で玉を掴んでいます。(右)波に遊ぶ亀。喜代松だけでなく、この時代の宮彫り師は、葛飾北斎の波の造形の影響を受けています。
建築関係のメンバーが、初層(左)と、二層(右)の垂木の造形の違いを指摘してくれました。二層の放射状の方が遥かに難しい造作です。
薬師堂全景。初層と二層の屋根のカーブも微妙に違います。昔は屋根も檜皮葺だったのではないでしょうか。
唐破風の屋根のカーブが美しい。各所に散りばめられた宮彫りのバランスが絶妙です。
薬王山健命寺の山門から。奥の仁王門は最近新築されたものです。一部に古い材が使われています。
健命寺の本堂。本堂の向拝は、左甚五郎の後裔である五代目後藤茂右衛門正綱の弟子の間瀬大工、石塚甚助によるものです。こちらも見事です。木鼻は、象と唐獅子です。頭貫上には、古代中国の故事に由来する黒松の樹下で酒壺と酒盃を掲げる仙人の図。
隣に鎮座する湯沢神社の木彫は、越後の岩崎嘉市良重則の作。
木鼻の唐獅子。非常に独創的な造形で、迫力があります。
湯澤神社の鳥居。同行のメンバーも大満足して宿に戻りました。最終日は、北斎館へ。企画展「旅する浮世絵」は圧巻でした。それは、次の記事で。
●北斎館
◆『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林(税込1728円)が好評発売中です。郷土史研究家でもあるので、その山の歴史も記しています。地形図掲載は本書だけ。立ち寄り温泉も。詳細は、『信州の里山トレッキング 東北信編』は、こんな楽しい本です(妻女山里山通信)をご覧ください。Amazonでも買えます。でも、できれば地元の書店さんを元気にして欲しいです。パノラマ写真、マクロ写真など668点の豊富な写真と自然、歴史、雑学がテンコ盛り。分かりやすいと評判のガイドマップも自作です。『真田丸』関連の山もたくさん収録。
★本の概要は、こちらの記事を御覧ください。
★お問い合せや、仕事やインタビューなどのご依頼は、コメント欄ではなく、左のブックマークのお問い合わせか、メッセージからメールでお願い致します。コメント欄は頻繁にチェックしていないため、迅速な対応ができかねます。
インタープリターやインストラクターのお申込みもお待ちしています。シニア大学や自治体などで好評だったスライドを使用した自然と歴史を語る里山講座や講演も承ります。大学や市民大学などのフィールドワークを含んだ複数回の講座も可能です。左上のメッセージを送るからお問い合わせください。
●宮彫りの名工・北村喜代松の木彫を求めて行脚の旅=その3 野沢温泉健命寺と湯沢神社(妻女山里山通信)2020.8.11
健命寺において彼の宮彫りは、薬師堂で見られます。薬師堂は、北村喜代松と息子の北村四海の作。祀られている薬師瑠璃光如来は上杉謙信の陣中守り本尊と伝わっています。薬師堂正面1間唐破風向拝の北村喜代松作の龍の木彫。木目を極限まで活かしているのが分かります。口、鼻、耳の中に丹塗(ベンガラ)の赤が見えます。これを一本の欅から彫り出しているのですから。
薬師堂は2層宝形造。とにかく造形に一ミリのスキもありません。構成とそのバランスが素晴らしい緊張感を醸し出しています。頭貫には波と亀、さて何匹いるでしょう。9匹までは数えたのですが。
鳳凰。木目が縦に通っているところはいいのですが、横になっているところは弱いわけで、ギリギリの太さにしているのでしょう。造形にも工夫が見られます。
左の木鼻の貘(ばく)と唐獅子。貘は、悪夢を食べてくれるという、中国の想像上の動物。鼻は象、目は犀、尾は牛、足は虎で、体形は熊に似るという幻獣です。
右の木鼻の貘と唐獅子。よく見ると左右で厳密に同じ造形ではないことが分かります。
左の手狭には雀を追う若鷹。喜代松のお得意の題材です。
右の手狭にも雀を狙う若鷹。逃げる二羽の雀。これも一本の欅から彫り出しています。
(左)頭貫上の龍の腹部。木目が美しい。龍が爪で玉を掴んでいます。(右)波に遊ぶ亀。喜代松だけでなく、この時代の宮彫り師は、葛飾北斎の波の造形の影響を受けています。
建築関係のメンバーが、初層(左)と、二層(右)の垂木の造形の違いを指摘してくれました。二層の放射状の方が遥かに難しい造作です。
薬師堂全景。初層と二層の屋根のカーブも微妙に違います。昔は屋根も檜皮葺だったのではないでしょうか。
唐破風の屋根のカーブが美しい。各所に散りばめられた宮彫りのバランスが絶妙です。
薬王山健命寺の山門から。奥の仁王門は最近新築されたものです。一部に古い材が使われています。
健命寺の本堂。本堂の向拝は、左甚五郎の後裔である五代目後藤茂右衛門正綱の弟子の間瀬大工、石塚甚助によるものです。こちらも見事です。木鼻は、象と唐獅子です。頭貫上には、古代中国の故事に由来する黒松の樹下で酒壺と酒盃を掲げる仙人の図。
隣に鎮座する湯沢神社の木彫は、越後の岩崎嘉市良重則の作。
木鼻の唐獅子。非常に独創的な造形で、迫力があります。
湯澤神社の鳥居。同行のメンバーも大満足して宿に戻りました。最終日は、北斎館へ。企画展「旅する浮世絵」は圧巻でした。それは、次の記事で。
●北斎館
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