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信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

信州の夏の郷土料理。丸茄子(小森ナス)のおやき。伝統野菜を守れ!(妻女山里山通信)

2021-07-29 | 男の料理・グルメ
 善光寺平名物の「ナスのおやき」は、信州丸ナスだからこそできる料理です。信州丸ナスは、善光寺平でとれる大きく丸いナスで、実がしっかりとして重く、味が濃厚で、大きいのは赤ん坊の頭ぐらいになります。このツヤツヤの信州丸ナスにごま油で練った信州麹味噌をはさみ、これまた信州の中力粉(地粉)を練ったもので包み、青紫蘇の葉ではさんで蒸せば、信州郷土料理の代表格、ナスのおやきの出来上がりです。青紫蘇の葉ではさむのは祖母の発案で、母から妻まで継承されました。紫蘇の風味がナスとよく合います。

 市販のモノや各家庭で、材料、味付け、作り方などが微妙に違います。ナスのおやきには、囲炉裏で作る古典的な灰焼きおやきと、蒸すおやきがあります。また、家によっては焼き目をつけてから蒸し上げる調理法もあります。ミョウガの葉や柏の葉で包んで香りをつけるやりかたもあります。昔はたくさん作って、井戸に吊して冷やして食べました。今回は青紫蘇の葉とミョウガの葉を使いました。

 17年前のカット。父が育てていた小森茄子です。ダンボールに茄子やトウモロコシ、胡瓜、ピーマン、唐辛子など夏野菜をたくさん詰めて送ってくれました。我が家のベランダも野菜畑で、ミニトマト、バジル、サラダ菜などを育てていました。仙川のマンションの近所には有機栽培の無人販売所がたくさんあって助かりました。

(左)信州丸茄子。小森茄子です。ソフトボールぐらいあります。(右)確かこの夜は、妻がプランタン銀座の講座の講師の仕事で遅くなるので息子達とナスのおやきを作ったのでした。食べざかりなので凄い量です。

(左)小さな頃から料理好きなので見様見真似ですが結構器用に包んでいきます。(右)自分達で作ったので美味しさもひとしお。茄子ひとつで4つのおやきができますが、3つ分12個は食べたと思われます。まあ今はこんなに食べられないと思いますが。

●丸茄子のおやき レシピ
■材料(20個分)
信州丸ナス・・・・・・・・5個
中力粉(地粉)・・・・・・600g
水・・・・・・・・・・・・300cc(ゆめちからなど強力粉の場合は6割に)
信州麹味噌・・・・・・・・100g
ゴマ油・・・・・・・・・・大さじ1
青紫蘇の葉の大きなもの・・40枚
青唐辛子・・・・・・・・・1本(好みで)
 粉と味噌はやや多めに作るのがミソ。足りないと面倒ですが、余っても色々な料理に使えますから。

■作り方
1. ボウルに小麦粉、水を入れ、やや柔らかめの耳たぶの柔らかさに練る。
  濡れ布巾をかぶせてねかす。
2. 別のボウルに味噌、ゴマ油、好みで青唐辛子(焼いてみじん切り)をよく混ぜておく。
3. ナスを洗ってヘタを落とし、横に4等分の輪切りにする。輪切りにしたものに切れ込みを入れる。
4. 3の切れ目に2の合わせ味噌を、ナスの大きさに応じて小さじ1ほど挟む。
5. 手のひらに水をつけ、ねかしておいた小麦粉を適量手に取る。
6. ナスをのせ、周りから小麦粉をひっぱって包む。包んだら青紫蘇の葉ではさむ。
7. 大きめの蒸し器を火にかけ沸騰させておく。ナスをくっつかないように斜めに重ねていく。
8. 強火で15〜20分ほど蒸して、箸がスッと入ればできあがり。
 今回は、小麦粉は幻のいがちくオレゴンと地粉のブレンド。味噌は仲間と手作りの糀味噌。唐辛子は、焼いた青唐辛子を麹と醤油で漬け込んだものを使いました。

 日本にはナスの美味しいといわれる所がいくつかあります。その中の一つが長野盆地で、伝統野菜の信州丸ナスです。小森茄子、川中島茄子、小布施茄子など沖積地に最も適した果肉が厚くて密度の高い、焼いても、煮ても、蒸かしても良しと何をしても美味しい茄子です。信州の風土と深く結びついた、野菜といえるでしょう。
 父も昔は長野市東福寺の小森のある方から苗を買っていたのですが高齢で止めてしまい、しかたなく市販の苗に切り替えたのですが、昔のような密度や味の濃さはなくなりました。もちろん今も美味しいのですが、20年前のナスは、もっと緻密で重く味も強く、水に放すと沈み水が真紫に染まったものでした。近年、小森ナスが復活との話を聞きました。本当に在来種で交配していないかは、水に放すと分かります。本物なら沈みます。浮いたら交配しています。市販のナスのおやきはふくらし粉が入ったり、具に砂糖が入りますが、私は素材の甘さと旨さをいかすためにどちらも入れないものが好みです。ナスも小さく薄いので、やはり自分で作るのが一番です。
 ナスに限らずスーパーに並んでいる形の揃った綺麗な野菜は、現在ほとんどがF1種です。種が発芽しないので農家は毎年苗を買わなければなりません。化学肥料と農薬がないと育ちません。早生種は栄養もありません。収量と形ばかりにこだわり味や栄養が犠牲になってきました。伝統野菜は、ハイブリッドではないので育ち方もバラバラで収量も多くありません。しかし、最近その伝統野菜が見直されています。野村種苗とか信州でも伝統野菜の種を継承している会社があります。種は種苗会社のものではなく国民の財産です。遺伝子組換え作物になったら、郷土料理も和食文化も滅びてしまいます。

「信州の伝統野菜」:必見です! 長野県が実施する「信州伝統野菜認定制度」によって認定された野菜で、現在71品目の野菜が認定されています。JAのスーパーやスーパーの産直売り場、道の駅や八百屋さんで買えます。

 『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林(税込1728円)が好評発売中です。郷土史研究家でもあるので、その山の歴史も記しています。地形図掲載は本書だけ。立ち寄り温泉も。詳細は、『信州の里山トレッキング 東北信編』は、こんな楽しい本です(妻女山里山通信)をご覧ください。Amazonでも買えます。でも、できれば地元の書店さんを元気にして欲しいです。パノラマ写真、マクロ写真など668点の豊富な写真と自然、歴史、雑学がテンコ盛り。分かりやすいと評判のガイドマップも自作です。『真田丸』関連の山もたくさん収録。

本の概要は、こちらの記事を御覧ください

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