前回採り残した場所へ午前中だけいってきました。時間を節約するために林道を走り、登山道をショートカットして尾根を直登。狙っていた森に入ります。そこは月の輪熊が頻繁に目撃されている所なので、熊鈴をつけ、時に笛を吹き、東北のマタギの人が効果があると言っていたペットボトルをつぶしながら歩きました。ペットボトルをつぶすと、かなり大きな音が出ます。それが自分より大きな個体が枯れ枝を踏みつぶしながらやってくると思い、熊が逃げていくというのです。本当かどうか分かりませんが、なにか効きそうです。
お目当ての場所には、残念ながら思ったほどたくさんはありませんでした。そこで、以前から目を付けていた場所へ行ってみることにしました。ただ、より月の輪熊の棲息地に近く、通り道なので神経を使います。ヤブ山を越えてその場所へ行ってみると、尾根筋から時候坊が列を作って並んでいます。斜面を見ると、あちらにも菌輪、こちらにも菌輪。上にも下にも左右にもあります。舞い上がる心を静めてから順番に採り始めました。
深山なので、他の人が来る心配はまずありませんが、といっても、いつ熊さんが通りかかるかもしれません。注意を四方八方に払いながらのきのこ狩りです。たくさんあるので老菌や虫食いの酷いものは採りません。それでも大きな袋がアッという間にいっぱいになりました。持ち帰るのが大変でしたが、途中菌糸をよさそうな場所にばらまきながら下山しました。きのこ狩りは、これが大事なんです。信州の低山は、時候坊の季節ももうこれが最後です。寂秋は、確実に深まっていきます…。
そしてキノコではないのですが、菌つながりの話題をひとつ。私も撮影を続け、カフェギャラリーでの展覧会に写真を出したり、フォトギャラリーにもアップしている粘菌(変形菌)ですが、脳を持たない原生生物である粘菌に迷路を最短ルートで解く能力があることを発見した北海道大の中垣俊之准教授ら6人が、ノーベル賞ならぬユーモア溢れる意義深い独創的研究に送られるイグ・ノーベル賞の「認知科学賞」を受賞しました。
わが家も、国立科学博物館でいただいた粘菌のモジホコリをペット「モジ太郎」として飼ったことがあります。これは、その時のレポです。飼育室(シャーレ)から逃亡を試みたり?なかなか可愛いやつでした。迷路を抜けられるからといって賢いとか知能があるとかということとは違うのですが、生命の不思議を再認識させてくれます。
NHKスペシャルの「月と地球」で、生命の誕生の鍵を握っていたのは鉄であるというのをやっていました。地球にあった水、窒素、アンモニアなどに、小惑星から隕石が衝突して生命が誕生したと。その生命の元、アミノ酸を作ったのが鉄であるというものでした。鉄は古来より信仰の対象で、古事記など日本の神話や登場人物の名も鉄に関連するものが殆どです。信濃の国のシナも鉄を意味する言葉のひとつといわれています。信濃の枕詞「御(美・水)篶刈る」も鉄バクテリアや高師小僧など鉄との関係がいわれています。そんなアミノ酸から生まれ、最も原始的な生物として私達の身近にいる粘菌。散歩やきのこ狩りのときなどに、少し意識して探してみると面白いと思います。
【MORI MORI KIDS Nature Photograph Gallery】のキノコに、時候坊(ハナイグチ)の写真追加しました。
ネイチャーフォトは、【MORI MORI KIDS Nature Photograph Gallery】をご覧ください。キノコ、変形菌(粘菌)、コケ、花、昆虫などのスーパーマクロ写真。滝、巨樹、森の写真、特殊な技法で作るパノラマ写真など。フォトドキュメントの手法で綴るトレッキング・フォトレポート【MORI MORI KIDS(低山トレッキング・フォトレポート)】もよろしく。