エノキの葉に小さなブツブツがたくさん。なんだか気持ち悪いと言う前によく観察してみましょう。これは虫コブ(虫えい・ゴール・GALL)といってエノキハイボフシといいます。フシダニ(ダニ目フシダニ科)の一種によって作られる不規則な形の袋状の虫えいです。体調は0.2ミリ以下のウジ虫状。
また、エノキには先の尖ったエノキハトガリタマフシもできることがあります。深大寺城趾の大榎にたくさんできていたのを観察したことがあります。形成者はエノキトガリタマバエ(ハエ目タマバエ科)。各々の虫こぶには幼虫が1匹ずつ入っています。年1世代で成虫は3~4月に羽化をして、エノキの新芽付近に産卵します。5月~6月に幼虫と虫こぶは成熟し、成熟した虫こぶは落下します。幼虫は地上に落下した虫こぶの中で翌春まで過ごして蛹になるのです。
虫コブは、アブラムシによっても作られます。アブラムシは日本だけで600種いるといわれています。アリと共同生活をするためにアリマキともいわれます。夏に雌が無性生殖で幼虫を産み、秋になると雄が現れ、交尾して卵を産みます。植物の汁を吸うときに、植物の生長を促進する物質(植物ホルモンやアミノ酸など)を出し、その植物を変形成長させます。そのメカニズムは、非常に複雑ですが、人工的に虫コブを作る研究も既に進められています。
実は、虫コブは古くから利用されてきました。マタタビはマタタビミミタマバエの作る虫コブができて初めて価値あるマタタビ酒になります。また、虫コブの名称の最後につくフシとはヌルデの虫こぶ、ヌルデミミフシ(五倍子)が元祖。これから黒い染料を取り、お歯黒、染め物(正倉院にあり)に使われました。また、薬、インク、占いなどにも使われてきました。
虫コブは、細菌によってできるものもあり、菌えいと呼ばれます。深山ではなく並木や家庭の樹木、公園などでも虫コブはよく見られるので気に留めてみるといいと思います。マンサクにできるマンサクメイガフシなどを切り開いてみると、なかから極小のアブラムシ、マンサクメイガフシワタムシがゾワゾワと出てきて、それは楽しいものです。
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