小子、なんぞかの詩を学ぶことなきや。詩はもって興すべく、もって観るべく、もって群すべく、もって怨むべし。邇くは父に事え、遠くは君に事え、多く鳥獣草木の名を知る。(陽貨)
君たち、なぜ詩を学ばないんだね。詩を読めば、人間の感性が目覚め、本当のことを見ようとするようになり、たくさんの人の気持ちがわかるようになり、その悲しみがわかるようになる。近いところでは、父母の愛がわかるようになり、遠いところでは、すべてを与えてくれている神の愛に気づくようになる。そして、鳥や獣や草木にさえ、愛を注ぐようになる。
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勉強をして、自分を豊かにしようとするなら、まずよい本を読みなさいということです。難しいことではない、簡単なことから、ほんとうの自分は始まるのです。
勉強したくても、どうやったらいいのかがわからないという人は、とにかく、本を手にとってみましょう。本は、かなり、古いものにいいものがあります。時代を経ても読みつがれながらえている本には、真実があるからです。
生きている中で、壁にぶつかるとき、自分の限界や、過ちにぶつかるとき、そしてどうすればいいかが、わからないときは、先人の本を開いて、答えを求めてみましょう。なかでも、詩は、いいですよ。人間の情感を、理論理屈で武装することなく、素直に歌い上げているからです。
たとえば恋に苦しんでいるなら、万葉集でも開いてみますか。
ますらをや片恋せむと嘆けども醜のますらをなほ恋ひにけり (舎人皇子)
(男が、片思いなんかするもんかって思うけど、女なんて馬鹿だって思うけど、おれだって馬鹿なんだ、やっぱり好きなんだよ)
ほら、同じだって感じるでしょう。自分も同じ気持ちだよって、感じた人、いるでしょう。泣きそうになった人もいるでしょう。本当に、恋は苦しいんだよなって。
こうやって、人は、人の気持ちがわかるようになるんですよ。詩はほんとうにいいものです。たくさん読んでみてください。
もちろん、詩を読んでも、その恋がかなうってことはありません。むしろ、かなわないほうがいいんだよっていう方向に、やさしく導いてくれることがあります。もういいんだ。おれは、自分てものがわかったから。苦しんだぶんだけ、やさしくなれるから。
恋は、かなわないほうがいいってことのほうが、多いんだねって。痛みを微笑みに変えながら、乗り越えてゆく自分の気持ちをかみ締める。痛み、苦しみ、悲しみ、すべて、わかるようになった。それが、学んだということ。
愛が、わかったということ。
詩を読んでみましょう。ほんとうの自分への入り口が、きっとそこに見つかるでしょう。