世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

フレイヤ

2018-11-30 04:12:12 | 青空の神話


ニルス・ブロメール


ニョルズの娘、フレイの妹、オズルの妻にして、愛と美と豊穣の女神。輝くほどに美しく、猫の引く車に乗って旅をするという。
彼女は夫オズルを愛したが、オズルはフレイヤとの暮らしにあきてしまい、ある日ふらりと出て行ったまま帰らなかった。フレイヤはさめざめと泣きながら猫の引く車に乗り各地をさすらって夫を探した。フレイヤが落とした涙は岩のわれめに染み込んで黄金となった。各地に黄金の鉱脈があるのは、フレイヤが夫を探す旅の途中で涙を流したからだという。



イシュタルやアフロディテのような女神はどこの神話にも登場します。最も美しい女性の神というのは、神話には必要不可欠のようだ。ヴィーナスなどはゼウスよりも頻繁に絵に描かれている。人間にとって、いかに美しい女性が魅力的なものかということでしょう。そんな美しい女神が夫に去られてしまうというのは面白い。いかに美しい女神にも、思い通りにならないことはある。夫にすがるように各地を探してさすらう女神の姿に、本当の美しさとは何かということを考えます。





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モーセの発見

2018-11-29 04:11:42 | 青空の神話


セバスチャン・ブードン


イスラエル人アムラムとヨケベドの子モーセは、生まれて間もなくパピルスの籠に入れられてナイル川に流された。ヘブライ人がエジプトで増えることを懸念したファラオが、ヘブライ人の男児をすべて殺すように命じたからである。赤子モーセを入れた籠は川を流れていき、たまたま水浴びをしにきたエジプトの王女に拾われ、王子として育てられることになった。長じて彼は神の声を聞き、虐げられていたイスラエル人を導いてエジプトから脱出させた。



川に流されて王女の手に届くなどという人はよほどの強運の持ち主です。普通はありえません。子供を川に流すということは、大昔はありました。事情があって育てられない子どもを、親が川に流すなどということはあったのです。この話はおそらくその発展形でしょう。流された子供はみな死にました。生き残った子供などはいません。大昔は、親に捨てられるということは即、死を意味したのです。どんな理由があろうとも、子供を捨てることはいけないことです。すべてとはいかなくても、子供が十分に生きていけるようになるまで、親は子供を育てねばなりません。





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深淵の神

2018-11-28 04:11:48 | 青空の神話


青城澄


人間の裏切りにあった神が、たったひとり自分のもとに返ってきた人間の魂を救うため、巨大な魔と闘う。疲れ果てているが為それに勝てないことを理解した神は、大いなる深淵の神を呼び、魔とともに自分を飲み込んでくれることを願う。



「小さな小さな神さま」に出てくる神です。神とは言うが、概念的には神を越えた神であるらしい。善も悪も、聖も魔も、ともにすべてをのみこんでしまうという、あまりにも大きな存在。作者は、人間を愛し育てている神の上に、すべてを認め、すべてを支えている大きな存在を考えていたらしい。それには、すべてを存在の前の深淵にのみこむ深淵の女神と、すべての存在の生を照らす豊穣の女神にんかなとあり、この二柱は根を同じにしているらしい。
実におもしろい神話です。





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伊弉諾と伊弉冉

2018-11-27 04:11:11 | 青空の神話


西川祐信


ある日伊弉諾と伊弉冉は天の御柱をめぐって出会い、国生みをすることにした。イザナギは左回りに、イザナミは右回りに御柱を回り、出会ったところでまぐわいをした。先にイザナミが「まあ、いい男だこと」と声をかけ、あとでイザナギが、「おお、いい女だなあ」と声をかけて、子供を作ったところ、それは蛭子だった。女が先に声をかけたのがいけなかったのだとわかり、二人はもう一度最初からやり直して、たくさんの国や神を産んだ。



これは母系社会から父系社会への移行をにおわせる話ですね。実際、大昔は、子供を生む母親が中心として社会ができていました。しかし時代を経ると、男が台頭してきて女性を支配するようになった。それが現れている神話だと言えます。本当の話、別に女性の方から誘っても、おかしなことにはなりませんよ。どちらが偉いなどということはありません。ただ今の時代は、男性が未熟なので、女性に立てて欲しいという気持ちがありますから、よほど環境に恵まれない限り、女性はあまり男性をしのいだりしないほうがいいでしょう。心配しなくとも、必ずいつか男性は目覚めますよ。





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女媧

2018-11-26 04:10:59 | 青空の神話


任頤


女媧は人頭蛇身の女神である。彼女は黄土をこねて人間を作った。最初のうちに丁寧に作った人間は貴人となり、あとで面倒になって縄で泥をはね上げた飛沫からぞんざいに作った人間は、凡庸な人になったという。



女媧造人の伝説ですね。しかし神は人間をぞんざいに作ったりなどはなさいません。みなひとつひとつ丁寧に作ってくださる。この世の中に高貴な人と凡庸な人がいるのは、あくまでも成長過程でできてくるものなのです。たいていの場合、先に勉強が進んだものが高貴の人となり、遅れた者が凡庸となってしまいます。どうしても、勉強が遅れたものが、進んだものに嫉妬して妨害を始めるからです。それでますます勉強の差ができてくる。苦しいことですがこれは現実なのです。ですから勉強の遅れたものは、どこかで馬鹿なことをする自分に見切りをつけ、ほんとうの自分の勉強を始めねばなりません。





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シジフォス

2018-11-25 04:11:24 | 青空の神話


フランツ・フォン・シュトゥック


コリントの王シジフォスはある日、すばらしく大きな鷲が人間の娘をさらっていくのを見た。そしてこれは、ゼウスがまた見初めた女をさらっていったのかもしれないと思った。ほどなく、アソプス川の河神がやってきて、自分の娘がいなくなったと彼に訴えた。シジフォスはさっき見たことを話し、おそらくゼウスがさらって言ったのだろうといって、鷲の去っていった方向を教えた。アソプスは娘を探してゼウスを見つけたが、ゼウスは雷光を放って彼を追い払った。しかし秘密を漏らしたのがシジフォスだとわかると、ゼウスは腹を立て、彼を地獄に落とすことにした。そしてシジフォスは、地獄で岩を山の上まで持っていく責め苦を負うことになった。しかしその岩は苦労して頂上に持っていくやいなや転げ落ち、シジフォスはまたそれを持ち上げねばならず、永遠にそれを繰り返さねばならないのだった。



徒労の代名詞ともなっているシジフォスの神話です。浮気を言いつけただけでこんな責め苦を味わわすのはちょっといきすぎだという感じがしないでもありませんが、ゼウスにとってはそれくらい腹が立ったことなのでしょう。神話の中のシジフォスの罪状はともかくとして、これはわたしたちは、神のなさることを馬鹿にした罪だと解釈しています。神がなされたあらゆる美しい創造を、シジフォスは馬鹿にしたのです。それゆえにシジフォスは、それならば全部自分がやるがいいと言われて、地獄の山に放たれたのです。神の世界では岩は初めから頂上にある。だがシジフォスの赴いた地獄ではそうではない。全部自分一人の力でやらねばならない。それは人間にとっては、永遠に徒労を繰り返すほどの難しい仕事なのです。





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カインとアベル

2018-11-24 04:11:32 | 青空の神話


フレデリック・レイトン

アダムとイヴは、カインとアベルの二人の息子を産んだ。カインは長じて土を耕し、アベルは羊を飼った。ある日カインとアベルは主に供え物をしたが、主はアベルの供え物をとって、カインのものをとらなかった。そこでカインはそれを恨み、アベルを野原に呼んで、それを殺した。



人類最初の殺人と言われる神話です。このように、人が人を殺す理由は、たいていが嫉妬でした。人間は自分がつらかったのです。自分の中から自分を見ると、なんと愚かなのだろうと感じるからです。馬鹿なことばかりやり、恥ずかしい失敗ばかりする。そんな自分が四六時中自分と一緒にいるのだ。それがつらくて、自分ではないというだけで他者に嫉妬し、時にはそれを殺してしまう。カインとアベルに、それほど強い差はない。ただ、カインの方が先に手を出しただけなのだ。自分がつらいものは、必ず誰かに殺意を抱く。その実行を先んじたのがカインだったのです。逃げることはできない真実を抱いて、それからカインは迷走し始めるのです。





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がちょう番の女

2018-11-23 04:11:45 | 青空の神話


ウォルター・クレイン


ある国の美しい姫が遠い国の王子と結婚することになった。その母親の妃は多くの金銀の宝と、ものいう馬と侍女をひとりつけて姫を旅に出したが、途中で姫は侍女に罠をかけられてしまう。侍女は自分が姫になりすまして王子と結婚し、姫をがちょう番の女に落とす。しかし嘘が長く持つはずはなく、不思議ながちょう番の女の評判は王の耳にも届き、王は真実を知る。侍女は処刑され、王女は王子と幸せに暮らす。



うそと本当の物語ですね。真実の姫はがちょう番に落とされても誇りもその心も美しさも失わないのです。どんなに暗いところにいようとも、それは必ず王の耳にも届く。田舎に平凡に暮らしていた美女の話が、遠い外国の大統領の耳にも届いたように。





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白雪姫

2018-11-22 04:12:21 | 青空の神話


ワーウィック・ゴーブル


ある国に白雪姫というとても美しい姫がいたが、継母の王妃に妬まれて追い出されてしまった。王妃は魔法の鏡を持っていて、それに「世界で一番美しい人はだれ?」と聞くと、いつもは「王妃様あなたです」と応えるのだが、あるひとつぜんそれは「白雪姫です」と答えたのだ。姫は置き去りにされた森で、七人の小人と出会い、一緒に楽しく暮らす。だが白雪姫がまだ生きていることを知った王妃は毒林檎を作り、物売りに化けて白雪姫を尋ねていく。毒林檎を食べた白雪姫は死んだようになり、小人たちは姫をガラスの棺に入れて悲しむ。するとそこを王子が通り、あまりの美しさに姫に口づけをすると、のどにつまっていた林檎がとれ、姫は生き返る。



継母となっていますが、グリム童話の初版本では実母だったそうです。このように、年取った女が自分より若い女に嫉妬して殺そうとする話は、よくありました。逃げることはできない真実です。愚かな女性というものは、世界で自分がいちばん美しくないといやなのです。しかしそういう人は本当はとても醜い。自分以外のものみんなを馬鹿にしているからです。美しい女性というものは、みなのよいところ、美しいところを認めて称えることができねばなりません。そういう優しい人だからこそ美しくなり、みなに慕われるのです。





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ストゥルティア

2018-11-21 04:11:54 | 青空の神話


ポール・アントワーヌ・ド・ラ・ブライエ


美しい女になりたいばかりに、他の美女から自分を盗み、その自分ばかりを生きてきたあげく、本当の自分を失ったという女性。
こういう女性たちが、本当のよい女性たちを滅ぼしてきたのです。それに関しては、埋もれた神話がたくさんあります。
これはもう自己存在というものではない。美女になりたいあまり、本当の自分を捨てきってしまった。ゆえにこれはもう、自分ではない。しかし虚無でもない。ないはずのものになってしまった愚かな女性たち。
これをストゥルティアと言います。





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