「ようし、みな鍬は持ったな。では、行こう」
アシメックの声が聞こえた。ネオはもうモラのことは忘れ、広場の真ん中にいるアシメックを見た。アシメックはフウロ鳥の羽を三本髪にさし、太く長い腕を空に向けて立てていた。美しかった。ほれぼれする男だ。ついていきたい。
男たちはアシメックに従い、イタカの野に赴いた。イタカの野を掘るなど、初めてする仕事だ。誰もが不安を持っていた。だが、堂々と前をゆくアシメックの背中を見ていると、勇気が湧いて来る。なんでもできるような気がした。
イタカの西のはずれ、オロソ沼との境界辺りにまで一行を導いていくと、アシメックはみなをひとところに集め、しばし待たせた。そして、腰に差していたナイフを抜き、地面に線を描き始めた。
「この線に沿い、掘っていくんだ。幅はこれくらいでいい。深さは腰くらいだ。沼から遠いところから掘れ。そう、そこのあたりだ」
「ずいぶんと長い」と驚いて言う者がいた。実際、アシメックが地面に引いた線は、みなが思っていたよりもずっと長かったのだ。これは一日で終わる仕事ではない。アシメックはその声に笑って言った。
「できる仕事だ。墓掘りを七日ほど続けるんだと思えばいい。みんなでやれば、必ずできる」
そしてアシメックは、自分の鍬をとり、大きくふるって地面に最初の穴を開けた。それを合図に、みなが一斉に掘り出した。