烏の新しい少佐は礼をして大監督の前をさがり、列に戻って、いまマジエルの星のいるあたりの青ぞらを仰ぎました。(ああ、マジエル様、どうか憎むことのできない敵を殺さないでいいように早くこの世界がなりますように、そのためならば、わたくしのからだなどは、何べん引き裂かれてもかまいません)
マジエルの星が、ちょうど来ているあたりの青ぞらから、青い光がうらうらとわきました。
宮沢賢治「烏の北斗七星」
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宮沢賢治はゴッホの再生である。ゴッホの人生で果たせなかった使命を、なんとかしようとして、死んでからまた、すぐに生まれてきた。
だがこの人生も、馬鹿に妨害されて、ほとんど何もできなかった。
彼は人格を荒らされて、いやなことをされすぎて、自分のことは何もできなくなった。彼は美しい物語を残したが、それはほとんど、彼をバックから支えていた天使が、彼と融合してやったことなのだ。
あまりに悲惨な例だ。
賢治が書いている詩や物語は、賢治自身も書いているが、ほとんど、バックから彼を守護していた天使が書いたんだよ。だから、賢治自身は、自分が書いたものとは思えないと思っている。確かに作品の中に自分はいるが、それを中心にして、ほかの天使がすべてをやっているからだ。
バックから援助していた天使が、彼の魂を北辰のように中心に据えて、彼がやりたいと思っていたことをすべて詩で表現した。
賢治の物語が美しいのは、その愛が美しいからだ。