世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

子貢

2013-12-31 08:37:49 | 詩集・空の切り絵

先生は
馬鹿じゃないですか
こんなことも
できないなんて

ほら こうやって
人に悦にいってもらえるように
少し上手にやれば
楽に儲けることができるのに

仁だの 礼だのと
大切なのはわかりますよ
そういうきれいなものが
人間は好きですからねえ
でも
金がなければ何にもできない

人間
楽なのが好きですからねえ
好きなことを好きなだけやらせてやるって
いいことを言ってやって
それなりになんかしてやれば
けっこう思い通りになる

自然に
金がこっちに流れてくる

  ***

 瑚なり。(論語・公冶長)

  ***

それはどういう意味ですか
おれができるやつだって意味ですか?

馬鹿につける薬はない?

それはどういう意味ですか



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2013年の終わり

2013-12-31 05:05:53 | 花や木
2013年最後の月の花や虫。
冒頭はガザニア


サザンカ


コスモス


ショウリョウバッタ


ツワブキ


ソテツ


ムラサキカタバミ


ホトケノザ


キクとヨモギハムシ


山の紅葉


昼の月





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田吾作

2013-12-30 08:34:51 | 詩集・空の切り絵

つらいのは いやです
いたいのは いやです
苦しいのは いやです

盗んで 人から盗みまくって
自分は別に何もしなくて
偉くなってきたもんだから
おれ 何にもないのよ
何もできないの

だから
痛いことはいやなんです

人のために働きたくなんかねえ
そんなの馬鹿だから
馬鹿にされっから
いやなことはみんな
人にやらせねえと
おれがつらいんだ

みんな おれのためにやってください
なんでも おれのためにやってください
おれだけが いちばんいいもんにしてください
ほかはどうでもいいんだ

ほんで いやなことは
ぜったいしないでください
苦しめないでください
おれだけはもう なんもつらいことなくて
なんも痛いことしなくていいような
そんなもんにしてくださいよう

あほはいやなんだよ

ほんで 女はみんな
おれにせっくすさせてください
いっぱいいっぱい おれんとこきて
おれのためになんでもしてください
ぶすに頭を下げるのはいやなんだ
やさしくて えれえいいびじんだけ
おれんとこにいっぱいくるようにしてください

ぜんいん ぜんいん
おれのいうこと きいてください




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シャルル七世の戴冠式のジャンヌ・ダルク

2013-12-30 04:39:58 | 虹のコレクション・本館
No,46
ジャン・オーギュスト・ドミニク・アングル、「シャルル七世の戴冠式のジャンヌ・ダルク」、19世紀フランス、新古典主義。

アングルは少々問題のある画家だが、ジャンヌを誇り高く描いている絵というとこれが一番なのでとりあげた。

ジャンヌ・ダルクの実像はもう少し少年的だ。細く、背が高く、髪が短かった。男は、その姿を見ると、呆然とした。
美しいというレベルではない。きつい女だったのだ。男ではないのに、すごい。そういう女だったのだ。

男の原理における戦いが、堕落に帰して、現状を打開できる光の見えない闇に落ちたとき、このような女性原理の光が、事態を解決に導くことがある。

彼女らは、男のように汚い知恵や手段を使わない。ただ、清らかな愛で、皆のために、皆を救いたいと思うのだ。ジャンヌはまさにそういう女性だった。その行動の元にあるものは、ただみなへの愛だった。国を救いたかった。その愛の姿に、男は呆然とし、戦ったのだ。

女の戦い方というのは、男とは違う。ただ真正面から愛を振りかざす。男はそれにかなわない。そして男性原理を超えた愛が、あまりに堕落した男の戦いを、清らかに断ち割る。そして苦しい現状が打開され、国は奇跡的に救われる。

実に、このカードが出てきたら、もう終わりだというカードなのだ。男が女にかなうわけがない。

しかし男は、自分が馬鹿になるのがいやなばかりに、ジャンヌを惨く殺す。
しかし、ジャンヌは滅び去らぬ。見事によみがえる。

万物を生み出す女性は、自らをも生み出すことができるからだ。




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聖パウロ

2013-12-29 09:04:44 | 詩集・空の切り絵

教会の偉いところというのは
激戦区なんですよ
にんげんとして
いいものになろうとしたら
今もっともいいのは
イエスのしもべですから

みんなここに
来たがるんです
昔は それはそれは
やつをいやがっていたやつが
みんなここに来るんですよ

ここでいいやつになろうとしたらねえ
舌が二枚では足りません
悪いことは
やらなきゃならないってものです

うつくしい
きたならしい
いやになるほど
かんぺきだ
そんなもんになろうとして
どんだけのことをやるんだ
にんげんは

ばかみたいですよ

い え す を
愛しているかって?
どう言ったらいいものか
馬鹿にしたら自分が終わりだから
やりませんが

あんなことになるくらいなら
馬鹿の方がましだって
思うことはありますよ



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十字架上のキリスト

2013-12-29 05:25:24 | 虹のコレクション・本館
No,45
バルトロメ・エステバン・ムリーリョ、「十字架上のキリスト」、17世紀スペイン、バロック。

昨日と同じ理由で、磔刑図を探した。この図はたくさんの画家が繰り返し描いているが、なかなかにむずかしい。
むごたらしく描きすぎ、見てはいられないような図もたくさんある。だがこのスペインの画家の絵は、比較的穏やかに見ることができる。

この図を見て、自分も痛みを感じられないようなら、人間はどこかで感受性を拒否していると言える。

磔刑の図は、男というものが、敗北と関係なく生きることはできないということを、教える。

どのような美しく正しい男でも、暴虐の嵐の前に、こうならざるを得ないという経験を、一度はしなくてはならない。それが男というものだ。

これから永遠に逃げ続けていくことは、男にはできない。馬鹿が負ける痛みが嫌で、言と策を弄して逃げる奴ほど、汚い衆愚に逃げ、男を腐らせる。腐った男ほど、世界を荒らし、暴虐を撒き散らすものはない。暗黒とは、衆愚のことだ。

キリストは復活することはできない。死なねばならないからだ。暗黒の衆愚に挑戦し、自分の光を貫いて死んでこそ、男は真に光るものとなる。

これが怖くては、永遠に男にはなれない。

磔刑図は、男の紋章だ。




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ヨハネ

2013-12-28 08:34:19 | 詩集・空の切り絵

かれを裏切ったのは
ユダじゃない
おれです

金で売ったわけじゃない
すごくいいやつだったけど
みんながいやだって言い出した時
おれもいやだって言ったんです

馬鹿みたいだこんなのって
みんなと一緒に言ったんだ

蹴りいれましたよ
這いつくばってるあいつに
ひどいことも言いました
みんながやってるから
おれもやろうって
ちょっとひどいことやりすぎました

たぶん
おれが一番ひどかった
だってあいつが
いやだったんだよ
いちばん すきだったから

あいつがいなかったら
おれなんにもないから
そんなやつがいるなんて
つらすぎるのよ
けど

いなくなっちまったら
ほんとになんにもない
あいつ
気取ってたけど
好きだって
言ってくれたのに
あいつだけだったのに
こんなおれみたいなやつ
好きだって
言ってくれるの

なんで殺したんだ
なんで殺したんだ

なんで

一体いつまで
ここにいるんだ
おれは



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ヘラクレスとレルネのヒュドラ

2013-12-28 04:26:16 | 虹のコレクション・本館
No,44
ギュスターヴ・モロー、「ヘラクレスとレルネのヒュドラ」、19世紀フランス、象徴主義。

ヘラクレスを描いた絵を取り上げたかったので、探した。なかなかに気に入った絵がみつからなかったが、これを採用した。

頭が多数ある蛇と勇者が戦うという神話は、日本にもあるが、それは大勢で暴虐を働いて、世界を荒らしていたものを、一人の力強く正しい男がおさめるという出来事が、神話化したものだ。

事実、男というものが、正しい場面で正しく力を発揮する場合、ヘラクレスの神話のようになる。実に太古の昔には、このヘラクレスのような男が、けっこういたのだ。

だが、ジーザス・クライストの神話以来、そういう男は事実上、存在できなくなった。そのような男は、大勢の暴虐者、すなわちヤマタノヲロチやヒュドラによって、殺されるようになったのだ。

この美しい男性性を表現できる男が、いなくなった。故に男は、ヘラクレスという機能を、警察や軍隊で表現するようになった。どちらにしろ、団体でやらなければ、大勢という暴虐に対抗できなくなったのだ。

これは悲しいことだ。実に男というのは、団体ではなく、単体でなければ、表現できない美であるからだ。

ヘラクレスが存在できない世界にくる救済者は、もう男ではない。

たったひとりでヒュドラに立ち向かえるものが、もう男にはいなかった。だが。

ヘラクレスがこのまま、だまっているわけがない。
と、信じたいね。





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ダイバダッタ

2013-12-27 08:04:23 | 詩集・空の切り絵

あんなものがいたら
おれはどうしたらいい

どんなにがんばっても
あんなものになれはしない

うつくしい
おおきい
たまらないほど
深い

えらいことばかりする
よってきてくれる
いいことばかりしてくれる
わらってくれる
そして言ってくれるのだ
おまえを愛してるって

おれはどうしたらいい
あんなものに
いいやつだって言われたら
どうしたらいい
ばかみたいなことして
うそついて
いやなことして
いいことになってる
こんまいあほなのに

あいしてるんだよ
おれも
だけど

憎めたら
救われるのに



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ヴォータン

2013-12-27 04:51:04 | 虹のコレクション・本館
No,43
コンスタンティン・ヴァシリエフ、「ヴォータン、古代スカンジナヴィアの至高神」、20世紀ロシア、象徴主義。

ソ連の時代のロシアの画家らしい。キュビズムやシュルレアリズムの作品も残しているが、この北欧の神話に題材を得た絵が面白い。

ヴォータンはもちろんオーディンのことである。実に賢い北欧神話の最高神だ。画家はこれに、大陸的父、勇者の相貌を感じているらしい。立派なヒゲに澄んだ瞳、立派な体格。男の理想だ。

精神の破壊というテーマを影に孕んでいた20世紀芸術の中で、ソ連の画家というのは面白いものを見せてくれる。国の体制の影響がなかったはずはない。確かにソ連は、極度に肥大した男性原理をもって貫かれていた国だった。こういう理想的な男を描ける環境があったのだ。

これがアメリカなら、スーパーマンのような漫画になる。正面から大真面目に描けるというのが、ロシアという国なのだろう。

もちろん、こういう絵は、男の現実に関連して馬鹿になる可能性が大いにある。現実の男には、こういうやつは、実際、存在不可能だからだ。大ウソのこんこんちきだと指をさされても仕方がない。実際これは、唯一神、全知全能の神という、男の永遠のあこがれの産物と言える。だがここに活路を作ると、おもしろいものもできるということだ。

童話的ファンタジーの世界にのみ生きられるような男を、ここまで立派に描いてくれたのがうれしいね。実に美しい。

男が、理想的に美しくなれば、こういうことにもなれる。そういう絵だ。これはおもしろい。




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