ふりむかないで
いま きみがふりむいたら
きみはぼくの
ほんとうのすがたを
みてしまう
ぼくはいまから
とりのように空にとんで
落ちそうな星の実を
もぎとってこなければならないんだ
空には 透明な神様の木があってね
星はみんな その木になる実なんだよ
それでときどき
枝から落ちそうになる星があるから
ぼくはその実を とってこなくてはならない
もし 星の実が 地球に落ちてきたら
それは困ることになるからなんだ
ぼくは 空にいって
落ちそうな星の実を
みんなとってくる
そして とった実を神様にお返しするとね
神様はひとつだけ ぼくに星の実を下さる
ぼくは大切に それを持って帰ってくるんだ
星の実は しばらくぼくの心臓の中で
あたためておいて
やさしいことばを 何度もかけてあげると
とてもやわらかくなってね
もういいよと言ってくれる
そのときがきたら ぼくは
静かな海辺か 深い森の奥に行って
誰も知らないところに
そっと星を埋めるんだよ
そうするとね
そこから
新しい世界が生えてくるんだ
本当の美しい世界が
ああ 今はぼくをふりかえらないで
ふりかえって 君がぼくを見てしまえば
君はぼくを忘れられなくなる
ぼくはもう ここに帰ってくることはできないから
忘れていいんだよ
そのほうがずっと 君のためだから
ぼくは ここにいなくても
ずっと 君を愛しているから
星の実は たくさん埋めておいた
いつか君は 夢のように
世界が新しくなっていることに気づく
新しい歌が 世界中に流れていて
君はいつかしら
自分もそれを歌い始めていることに
気づく
(オリヴィエ・ダンジェリク、遺稿より)