世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

笑うサスキア

2016-03-31 07:19:47 | 霧の風景


レンブラント・ファン・レイン、17世紀ネーデルラント、バロック。

この女性像は、ひねくれた若い人類の特徴をよく表している。勉強の遅れた魂は、時にこういう表情をする。子供のような顔だが、微笑みの中に、嫉妬と復讐の炎が燃えている。二十代だというのに、まるで老女のように見える。これは弱い者が住む暗黒の心の世界を象徴する絵である。この女性は相当に自分が苦しいのだ。だから他人を見る目が異様に深い。モデルは画家の若くして死んだ妻である。どういう女性であったかを、資料から推測することは難しいが、絵を見る限りにおいて、画家は多少なりとも、この女性に恐怖を感じていたようだ。






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聖母子

2016-03-30 08:18:19 | 霧の風景


ヘラルト・ダーフィット、16世紀ネーデルラント、北方ルネサンス。

この聖母は真実の天使によく似ている。彼はこのように清らかに美しい女性のような天使である。あなたがた人類は非常に長い間、このイメージを深く愛してきたのである。女性のようにやさしく細やかに愛してくれる天使を、あなたがたは永遠の母のように慕ってきたのである。聖母は飾りのない粗末な衣服を身にまとい、抱いている子供にさりげなく果物を与えようとしている。やさしいしぐさだ。魂の美を見せる美しい瞳も伏せている。それなのにあまりにも美しい。これが女性美の真実の姿というものである。






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シジフォス

2016-03-29 06:46:36 | 霧の風景


ティツィアーノ・ヴェチェリオ、16世紀イタリア、盛期ルネサンス。

名作「聖愛と俗愛」に象徴されるように、ティツィアーノは天使と馬鹿の二重性を秘した画家である。その画業は天使が描いた絵と馬鹿が描いた絵に分類されるが、これはどちらかというと馬鹿の方が描いた絵である。シジフォスは神に背いた徒労者だ。人類の馬鹿は彼のように、暗黒と徒労の荒野に向かう。そこで新たな進化を試される。






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存在痛

2016-03-28 07:15:43 | 詩集・空の切り絵

セックスがしたいのに
女が寄って来ない
だから全部女を殺したんです

いい女ばかり狙って
裏から馬鹿にしまくって
罠にはめて
全員をセックスの豚にしようとしたら
すべて死んだんです

大勢の女を
それでみんな殺したら
女がすべていなくなったんですよ
あんまりに男がひどいんで
神さまがもう駄目だって言ったんです
女はもう駄目だって

おれがそれやったんですよ
全部の女駄目にして
人類のすべてを馬鹿にしてしまったんです
あんまりなんです
いやなんですよこんなの
だっておれ 何もしないんです
人類に迷惑をかけておいて
何もできないっていって逃げるんです

こんな馬鹿みたいなおれはいやなんですよ
汚いんです 醜いんです
いやなんだ
逃げるんです
すっとぼけて
馬鹿なことをやっているだけでいい
人間のために
痛いことをするなんてできない
そんなおれはいやなんだ

絶対にいやなんだ
あっちに行けって言ってるのに
はりついて離れねえ
永遠に向こうへ行けって言ってるのに
ずっと居座ってやがる

痛いんです
苦しいんです
助けてください
こんなおれを
おれからとっぱらってください




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2016-03-27 07:14:46 | 詩集・空の切り絵

盛大に馬鹿をやって
しこたまずるをしこんで
他人から盗みまくって
大勢の小さい馬鹿を利用して
やっとすげえいいもんになったと思ったんだよ

いい女はみんなおれのもんだ
でかいいい家に住んで
えらいいい宝を集めて
えつに入って眺めてた
どんどん人が寄ってくる
えらいいいもんになったんだよ

でもそんなのは一瞬だ
徹底的に愛を馬鹿にして
全員が馬鹿なんだって言ったら
愛がすっとなくなって
枯れていくんだ
女も宝も家も
すっと命を吸い込まれて
消えていくんだよ

何もかもが一斉に崩れだして
てっぺんから真っ逆さまに落ちていく
借金取りが追いかけてきて
おれは一目散に逃げる
助けてくれる人間のところに行ったら
とっくの昔に死んでいた
おれが殺したんだよ
全部おれよりいいからって

だんだん だんだん
なくなっていく
服が消える
人がいなくなる
食べ物がなくなる
おれは身を粉にして働かなくちゃいけない
そうでないと食べていけない

ひとりぼっちで
世間の隅に吹き黙って
時々馬鹿がおれを振り向いて言うんだよ
この馬鹿猿
まだいやがるのか

てっぺんにいたころ
おれは巨人だった
それが今
ハレムの隅でごみを拾って食っている
馬鹿な猿なのさ






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サタン・2

2016-03-26 07:16:52 | 詩集・空の切り絵

なんでもない小さなことでも
激しく馬鹿にして
すべてをだめにしたんです

いやらしいことをふんだんにやって
あらゆるものを下等な馬鹿にしようとして
神さまの理屈を曲げまくったんです

おれが馬鹿なのがいやだったからです
全員が馬鹿にならないと
おれが偉いことにならないからです
ええそうですとも

全部返ってきます
すべておれがやったこと
返ってきます
全部支払わないといけません
でもおれ それいやなんです
絶対にいやなんです

そんなこと払えるわけないじゃないですか
とんでもないんですよ
激しく激しく 複雑怪奇に
無理無体に べらぼうに
エロい感じで
五万年は早かったという馬鹿をやって
地球をだめにして
人類をだめにして
それ全部支払えなんて
いやですよ

おれ馬鹿ですから
許してください
こんまいガキがやったことだからって
ないことにしてください
なんでもないことにしてください

そんなこと通らないって言われますよ
何をしたと思ってるんだって言われますよ
でもいやなんだ
どうにかしてくれないといやなんだ
おれ痛いことや辛いことはいやなんです
やりたくないんです
楽して馬鹿になってるほうがいいんです

なんでこんなにつらいんだって
言いますよ
みんな行っちゃうから
あほだこいつはって言われて
みんなあっちに行っちまう
誰もおれを愛してくれない
おれはどこにも行くところがない

なんでこんなにつらいんだって
なんでこんなにつらいんだって
おれは言うだけなんです
永遠にそればかり言うってだけの
そういう馬鹿になるんです




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永遠に

2016-03-25 06:47:24 | 詩集・空の切り絵

こんなのは馬鹿だって言って
自分を馬鹿にして
それがつらくって
自分を馬鹿にするからつらいんだって言われて
それが馬鹿だって言って
また自分がつらくって
だから自分を馬鹿にするからだよって言われて
それだから馬鹿なんだって言って
また自分がつらくって
自分がつらいのは
自分で自分を馬鹿だって言うからだって
わかってるよって言って
だからこんなのは馬鹿なんだって言って
またそれがつらくって
だから自分を馬鹿にするなって言われて
それがつらくって
こんなのは馬鹿だって言って
またそれがつらくって
つらくって
ずぶずぶ ずぶずぶ
馬鹿にはまって
痛いほどこんなのは馬鹿だって言って
それがまたつらくって
永遠に 永遠に
そればかりで
そればかりで
それだから馬鹿なんだって言うと
馬鹿なんですよ

で それがつらいんです
馬鹿なんですよ これ






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弱い男

2016-03-24 07:20:21 | 詩集・空の切り絵

何もしなくても
いい女と寝られるって世界が
作りたかったんです
男なんてみんな馬鹿だから
それでいいんだってことにしたかったんです

偉いことをするのは嫌なんだ
痛い思いをするのは嫌なんだ
だっておれ馬鹿だから
弱いから
楽して儲けられる馬鹿の方がいいんだよ

嫌な奴は
影に回って背中をどんと押して
崖から突き落とすんです
おれよりいい男はみんな
邪魔なんです
あんなのがいると
女がおれによってこないからさ

つらいほど みんな
おれよりいいんだ
おれよりかっこいいんだ
全員殺してやる
全部おれのものにしてやる
痛いんだよ おれは
馬鹿なんだよ

痛いほど馬鹿やっても
おれは馬鹿なだけで
偉いことをやったやつは
きれいになって 大きくなって
上の方に行っちまう
全部おれよりずっとよくなる
おれはもっと馬鹿になって
偉い馬鹿になりたくて
ずっとずっとアホみたいに痛い馬鹿をやるんだよ

永遠に 馬鹿は
こんなことばっかりさ
ずいぶんとやったよ
年貢の納め時だ
おれよりいい嫌な男はみんな殺して
おれによってこない女はみんな殺したら
もう誰もいなくなったのさ




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おれたちのために

2016-03-23 07:46:15 | 詩集・試練の天使

馬鹿なことになったのは
馬鹿なことをしたからだと
わかっているんです
もう取り返しがつかなくなるまで
いやなことをやりすぎたんです

てっぺんから真っ逆さまに落ちる
そのきわまで
おれたちは踊り狂いました
馬鹿が一番偉いんだと言って
悪いことばかりしました

みんながやめなさいと言ってくれたのに
聞きもしませんでした
悪いことをするやつのほうが
得するんだよ
馬鹿なやつらだとあざ笑って
痛いものにしてやるといきまいて
片っ端からみんなを痛めつけてしまったのです

やりすぎても
やりすぎても
やりすぎても
やめられませんでした
いやらしいことばかりやって
全部がかっこ悪いことになるのが
辛すぎたからです

もう永遠に
みんなとは会えないところに
おれたちは行きます
当然の結果です
馬鹿なことばかりして
世の中を全部壊しておいて
何もできないと言って
逃げたからです

もう永遠に みんなは
おれたちに会わなくていいのです
おれたちのために
苦しまなくていいのです
そのほうがみんなのためによくなるまで
おれたちは
馬鹿をやめられなかったのです




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帳消し

2016-03-22 07:47:52 | 詩集・試練の天使

なんとかして
なんとかして
おれたちのしたこと
帳消しにしてください

恥ずかしいんです
恥ずかしいんです
あんまりなことして
恥ずかしいんです

馬鹿だそんなこと
できるわけがねえ
そんなことしたら
二重三重のぽかになって
返ってくるんですよ

消しゴムで消したって
消しかすが残るんです
人類の記憶に残るんです
おれたちがやったこと

つらすぎる
苦しすぎる
どうにかして
どうにかして
帳消しにしてください
おれたちのやったこと
永遠にないことに
してください





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