明日は どこからやってくるのだろう
遊び疲れた子りすが
子守唄を聴きながら眠る
その夢の中から
昨日は どこに行ってしまったのだろう
恋人を失った女の子の
涙が溶けているインクで書かれた
小さな日記の中に
今日は どうしてあるのだろう
君の喉に隠れている
愛のささやきを
大すきなあの人の耳元でさえずるため
昨日までいた あの人は
どこに行ってしまったろう
岩のように大きな 緑の木の
深い根の中に隠された
エメラルドの思い出の中に
流れていく空は どこまで行くのだろう
これ以上は見てはだめだよと
神さまがそっと扉を閉じる
大きな秘密の紙芝居の中まで
わたしの知らない秘密は
どれくらいあるのだろう
深い海の底で 緑の燕が一羽
小さな緑のたまごを生むまでの
時の数だけ
思い出を切り取り
あなたの影を
窓のむこうに置いてみる
わたしはふりむかない
ふりむけば とたんに
幻は消えてしまうと
わかっているから
ただ 小さな鉛筆など持って
書き物をしながら
窓の向こうからわたしを見ている
あなたのまなざしを感じるのだ
ああ あのひとの瞳は
小さな水仙のため息に似ていた
水晶を風に溶かしたように
透明に光っていた
小鳥に呼ばれたような気がして
思わず窓をふりむくと
ああ もうあなたはいない
静かな冬の日差しが
窓をあたためているばかり
わたしがもう一度
思い出をめくって
あなたの姿を探そうとすると
誰かが 静かな声で
もうやめなさいと言う
わたしは空耳を探して
もう一度 窓をふりむく
さっきの声は
あなただったのではないですか
わたしは窓を開けて
冬の日差しを浴びる