その日は朝早くから、アシメックはイタカの野に出て、櫓に花を飾るのを手伝った。楽師の道具である丸太も運び込んだ。村の方ではみな、自分の装いに余念がなかった。
日が高くなると、セムドやダヴィルに導かれて、男と女がイタカの野に出てきた。みなきれいに着飾っている。女は花を髪に飾り、一連のビーズの首飾りをしていた。化粧は額に赤い印がついているだけだが、みなあでやかに美しく見えた。男は頬に赤く大きなしるしを描き、髪にフウロ鳥の羽を差していた。胸には二連の首飾りをつけている。中にはどうどうとした鹿皮の肩掛けをつけているものもいた。自分でとった鹿の皮はつけてもいいのだ。
みなそわそわしながら、互いを見つめあっていた。過ぎる時間が遅すぎるというように、足踏みする男もいた。女たちは首飾りをいじりながら、恥ずかしそうにしていた。
セムドが男たちを東側に集め、ダヴィルが女たちを西側に集めた。そしてみなの気持ちが高ぶってきたころ、セムドがアシメックに合図をした。するとアシメックは勢いよく丸太をたたき、リズムを打ち始めた。
うぉ、という男の声があがった。
あとは自然に任せればいい。みな意中の相手をまっしぐらに目指し、歌を歌いかけていた。
山の雪よりもきれいな女
おれの白い衣になってくれ
と誰かが歌っている。するとそれにこたえて、しばらく経ってから女が歌った。
山の雪が解ける前に
わたしをつれていっておくれ
OKだという意味だ。そうするともう、ほかの人間は何も邪魔しない。ふたりは手をつないでイタカを出ていき、どこへともなく去っていく。