ホアン・デ・ヴァルデス・レアル、17世紀スペイン、バロック。
男は右手にロザリオを持ち、書物を読みふけっている。そのそばで、天使が天を指さしながら何事かをささやいている。王冠は魂の救いを表し、砂時計は過ぎ行く人生の時を表す。壁には大きな磔刑の図がある。本の山は、これまで人間がなしてきた知的財産を表すのだろう。つまり男は人間の救いを過去のデータの中に探そうとしているのだ。だがそこに本当の救いはない。天使は男に、書斎を出、神を信じてイエスのように一命と自分を賭して行動せよとささやいているのだ。そこにしか人類を救う道はないと。自己存在を救うのは自己存在による全存在を賭けた行動である。自分の限界を超えた挑戦をしない限り、人間に未来はない。