猫

猫と出会えば、必ず写真を撮ることにしている。

この猫は、かのじょを愛してくれたクロと同じ猫だと思う。もうだいぶ年寄りのはずだが、かわいいね。

悲しそうなのは、やはりかのじょが死んでしまったからだろうか。

よくこの近所をうろうろしているけど、特定の飼い主はいないらしい。どうやって食っているかは不明だが、おそらくえさをくれる人間がいるのだろう。

わたしのことが天使だとわかっている。目顔を見れば、シルマとわたしが違うこともわかるだろう。

わたしは彼よりはちょっと厳しいやつなんだ。かのじょにあわせておとなしくしてるけどね。

あまり個性は出さないことにしている。

醜い

天使まねの馬鹿女に言いたいことはね、自分ばかりきれいにしている女は全然きれいじゃないってことだよ。

かのじょはね、人類みんなを美しくする活動をしていたんだよ。

自分はいい加減な服を着ていた。化粧なんてしなかった。髪もゴムでひっくくっていただけだった。

自分よりも人を美しくしてあげたい。そういうことを考えている人だったから、きれいな服なんて着ていなくても、あれほどきれいに見えたんだよ。

でも馬鹿女は、自分だけきれいになりたいのさ。ほかの女はみんなブスでいいってものさ。

自分だけをしこたま磨きこんできれいにする。

それだから醜いって言われるんだよ。

ほんとの美人になりたいなら、自分よりもみんなをきれいにする活動をしていくことだ。

インスタ

最近インスタでの活動が低調だ。

インスタでは、本霊が芸術活動をしている人間を探しているんだ。

要するに、バックにいる他の霊魂がやってるんじゃなく、本霊そのひとがやっている活動を探している。

それがあれだけさがして七十人あまりしかいないというのが、この世界の現実なのさ。

ほとんどの人間が、バックにいる他霊に活動をやってもらっているんだ。

全人類が、そういう傾向にはまっていると言っていい。人間は今、嘘でもいいからいい自分になりたいという病気にはまってるんだ。

いろんなアーティストをさがすべく、いろんなとこを見てるけどね、それも結構疲れる。そういう人間の今いる境地が見えるからだ。

馬鹿の妨害があって、歌も詠めないしね。

まあ今しばらくは、この調子でいくしかない。

暇

馬鹿に妨害されて、著作活動があまりできないので、暇をもてあましてる。

絵を描いたり、読書したりで埋めてはいるがね。

毎日変わり映えのしない日々だ。

神社にお参りしたり、鳥の声を聞いたりで、心の飢えをしのいでいる。

以前は狂ったようにツイッターに歌を入れていたりしたね。あのころは、とにかくこの世界に無理やり生きていることが痛くて、やりまくっていたのだ。

豊かになんでもあるように見えて、われわれがいいと思うものは、この世界にはあまりに少ないのさ。だから自分たちで表現してつくりまくっていた。

馬鹿の邪魔でそれができないのは少々つらいことだ。

だが、何とかしのいでいこう。われわれにはやらねばならないことがある。

鏡

鏡を見ると、顔がすっかりわたしになっている。

シルマがやってたときは、かなり感じのいい美人に見えたけど、今はそうでもないね。

わたしの目つきや表情が、かわいいかのじょのかたちを剋するんだ。

だからあまり表情は動かさないようにしている。

他人の形に入るなんてことは、もうこれきりだろうけど、いい経験だとは思ってるよ。

自分を抑えて、この形にあわさなきゃいけないというのは結構苦しいもんだ。

かのじょはおとなしい美女だったからね。わたしもそれを無視して自分を出すわけにはいかない。かのじょの生き方を壊さないような生き方をせねばならない。

短期間で主体が変わるのは、それがけっこうしんどいからなんだ。

わたしはここで本当のわたしを出すつもりはない。最後まで隠すつもりだよ。

義歯・３

入れ歯のことなんか書いていたら、入れ歯洗浄剤の広告が入るようになった。

別に宣伝しなくても、もう使ってるけどね。

入れ歯が清潔だと、口の中にいれていても気持ちいいよ。

義歯を使い始めてから、味覚が変わったね。

米があまりおいしくない。魚や肉よりも、野菜がおいしいんだ。

それも生野菜。

キャベツの千切りとか、オニオンスライスなんかを、うさぎみたいに奥歯ですりつぶすのが気持ちいいんだよ。

野菜を食べると、口の中がさわやかになる。それで入れ歯の異物感もなんとなく軽くなるんだ。

入れ歯のことばかり書くのもなんだけど、年をとるってのがおもしろいんだ。

なんだか別の世界に入っていくみたいでね。

秘密

しばらく前から主体が変わっている。今のわたしはシルマではない。気づいたやつもいるみたいだけどね。

だれかはいまのところ秘密だが、シルマよりは厳しいやつだよ。

近くで見ている奴は、なんとなく雰囲気が変わったことを感じるかもしれない。

この存在は今、多くの天使が交代で主体をやっているんだ。なぜというに、やはり人の人生を奪うのは、われわれには少々苦しいことだからだ。なにもかも全然自分らしくないしね。

こんな苦しいことを、だれかひとりだけに背負わせるわけにはいかない。

だからみんなでやっているわけなんだが。わたしもいつ変わるかわからない。だから、わたしが誰なのかは、言わないでおくことにする。

人間様は、これを軽く考えてはいけないよ。君たちは天使に無理をさせすぎているのだ。

７０代までこれをやるのかということを考えると、われわれも少々気が重いんだ。

人間の姿

最近、モデル体型の女があまりきれいに見えないだろう。細すぎる。というか、何か不自然なんだ。

ああいうのはだいたい、裏の馬鹿が人工的に作っているんだよ。本物はほとんどいない。

そういうのに、人間が、嫌気がさしてきているんだろう。

神が作られた造形では、人間はもっと丸っぽい。小さい。

そのほうがかわいいし、いいことができるってものなんだ。男性的に長いスタイルをしていれば、修業ができているものでない限り、かなり傲慢になる。

小さいほうが、人の下になって人に尽くす道に精進できるんだ。人の下になるっていう修業は大事なんだよ。ここをぬきにして愛を学ぶことは超難しい。

もうそろそろ、人間は自分の本当の姿に戻ったほうがいい。

自然に愛を学べる、神が与えてくださった姿の方が、ずっといいんだよ。

義歯・２

だいぶ入れ歯にもなれてきた。

最初のうちは、もどしそうになって何度も外したり入れたりしてたけれど、今はずっと入れていることができる。

食事をするときのコツもわかってきたよ。

入れ歯を入れていると、口の中にしょっちゅう何かがあるって感じで、食欲が減ってくる。

何か何も食べたくないって感じなんだ。入れ歯が汚れるのも気色悪いしね。

それだと困るんで、定時には何かを口にいれることにしているんだけど。

年をとるってこともけっこう大変だね。おもしろいけど。

病膏肓

病膏肓だね。

最近の馬鹿は天使の真似を通り越して、天使になりきってしまっている。

馬鹿が、かっこだけじゃなく、人格まで盗んでる。

とにかく馬鹿は天使になりたいんだ。天使があまりにきれいだからだ。

それがどんなに滑稽に見えるか、馬鹿にはまだまるでわからないのだ。

人間はね、天使じゃないんだよ。真似だけで、天使になれるはずないんだよ。

命を投げて、人類のために実行することもできないくせに、美しい姿だけ盗んで、おとなしい人格を装って、天使になりきったつもりでいるんだ。

全部嘘だろう。人類がそこまで整っているはずがないんだよ。段階的に、人類はまだもっと荒い。

もういいかげんやめてほしいが、馬鹿はやめる気配はない。天使になれたつもりで、自分が馬鹿にいいんだろうさ。