ミューズの声聞こゆ

なごみと素敵を探して
In search of lovable

このたびの東日本大震災で被災された多くの皆様へ、謹んでお見舞い申し上げます。

大震災直後から、たくさんの支援を全国から賜りましたこと、職員一同心より感謝申し上げます。 また、私たちと共にあって、懸命に復興に取り組んでいらっしゃる関係者の方々に対しても厚く感謝申し上げます。

私がデイサービスを開設する日⑤

2017年03月31日 | なごやか

  突然持ち上がったデイサービスの開設に関する夫の熱意に根負けした私は、会社への後ろめたさを感じながら、夫の親友Mたちと話し合いの場を持つことにした。
Mが連れてきた職員候補の老健職員は、妙に目がギラギラと輝いている中年男性でKといった。
  Mと夫の話は情けなくなるほどネットやハウツー本からの借り物の情報ばかりだったが、そのKの話は現場の中堅職員だけに、説得力があった。
運営法人の設立、指定申請書類の作成、建物の改装、初期費用と運転資金のねん出、備品の購入、各種書式の整備などなどを、Kが私たちに上からびしびしと振り分けて行った。
だんだん私は上気してきた。
これらすべては、私がNPO法人なごやかの理事長のすぐ傍らにいて何度となく見聞きした事柄で、記憶が生き生きとよみがえった。
ちんぷんかんぷんといった表情の男たちを内心軽蔑しながら、私は自分に振り分けられた作業について、その場で了承した。
私は事業所の管理者と決まった。

 私は翌日からやまねこデイサービス内でこのひとと思う職員へそれとなく声掛けを始めた。
ところがその反応は予想に反して意外なものだった。
ふだんはこまごま不平を口にしている彼女たちだったが、私が立ち上げるデイサービスへ誘っても、色よい返事をする者は一人もいなかった。
―私はなごやかに勤めながらもう一人子供を産もうと思っている。
―私は来年、介護支援専門員試験に挑戦し合格したらなごやかの居宅部門へ移りたいと思っている。
―私は今の同僚たちが好きだから動く気がしない、どうしてあなたは独立なんて考えたの?
  私のモチベーションは入口からすっかり下がってしまった。
それでも、守りに入っているひとたちと私は違うのだ―そう考えることにして気を取り直し、前に進むことにしたのだが―。                
                                                                              (つづく)

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