電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

エルガー「チェロ協奏曲」を聞く

2006年12月09日 09時51分16秒 | -協奏曲
通勤の音楽として、ここしばらくの間はずっとエルガー(*1,*2)の「チェロ協奏曲」を聞いておりました。今日は、CDを車から自室に移し、比較的大きな音量で、のんびりと聞いております。

演奏は、ピエール・フルニエ(Vc)、アルフレッド・ウォーレンスタイン(*3)指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団。1966年にベルリンのUfaスタジオで録音されたものだそうです。ステレオの音量を上げても耳障りでなく、当時のアナログ録音としては高い水準を保っているCDだと思います。

チェロ独奏はピエール・フルニエ。私にとっては、ジョージ・セルとともに録音したドヴォルザークのチェロ協奏曲(*4)や、リヒャルト・シュトラウスの「ドン・キホーテ」などの名演でなじみ深いチェリストです。このCDでも、堂々たるチェロの響きを堪能することができます。

アルフレッド・ウォーレンスタイン(1898-1983)は、アメリカ生まれの指揮者で、1943年から56年まで、ロスアンジェルス・フィルハーモニー管の音楽監督をつとめています。現代の音楽に理解を示し、ハイフェッツらと親しかったそうで、アメリカ生まれの指揮者がメジャー・オーケストラの音楽監督に就任した最初の例とのこと。この協奏曲の録音の頃は、68歳になるのでしょうか。

第1楽章、アダージョ、モデラート。チェロの力強い独奏で始まる音楽は、意外に親しみやすい主題です。
第2楽章、レント、アレグロ・モルト。高音域を、独奏チェロがまるでヴァイオリン・ソロのようにめまぐるしく動き、素人目にはいかにも難しそう。
第3楽章、アダージョ。解説書によれば、愛妻「キャリス」は「本当の森の響き」だと評したそうですが、確かにそうですね。ただし、苔むした老木が重なり合って倒れている奥秩父のしめった森ではなく、冬になると葉を落とし春の芽吹きが美しい東北のブナ原生林のような、ややかわいた森。
第4楽章、アレグロ。第1楽章の主題が出てきます。独奏チェロとオーケストラの低弦パートが一体となる部分もあり、実演ではソリストの至福の表情が見られそうな音楽です。

楽器の中で、チェロの音色は特にお気に入りの一つです。第1次大戦が終わったばかりで、映画「心の旅路」の舞台となった頃の1919年に初演という時代を考えると、ずいぶんロマンティックな音楽ですが、それでも弓でレガートに奏するだけではなくて撥弦楽器のようにリズムを強調する部分などもあります。このあたりには、20世紀初頭という時代の影響を感じます。久々に、いい音楽を新たに知ることができました。

写真は、先月撮影したものですが、山形県庄内町(旧立川町)の風力発電の風車群。以前、プロジェクトXで放送・紹介されたことがあります。一度真下から見上げたいと思っていますが、なかなかその機会を得ません。携帯CDプレイヤーでエルガーの音楽を聞きながら、この風車群を真下から眺めてみたいものです。

(*1):Wikipedia より、「エルガー」の項
(*2):「プラムの部屋」より、エルガーの生涯と音楽の親しみやすい紹介
(*3):Alfred Wallenstein - An American Conductor at 100 (英文)
(*4):フルニエとセルのドヴォルザーク~「カール・ライスターの一番印象深かった録音」
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