電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

モーツァルトのピアノ協奏曲第22番K.482を聴く

2007年10月03日 06時19分47秒 | -協奏曲
モノラル録音の音から急にステレオ録音の音に変わると、思わず新鮮さに感動します。昔のFM放送では、ステレオ放送が始まるときには、左右のチャンネルからステレオ分離信号が流れ、最後にステレオ音声が流れました。初めて聴いたときの驚きは、今も忘れません。

ロベール・カサドシュ(Pf)とジョージ・セル指揮コロンビア交響楽団(クリーヴランド管弦楽団)によるモーツァルトのピアノ協奏曲を集めた3枚組CD(SONY 5033902)のうち2枚目は、ピアノ協奏曲第18番と第22番にピアノ・ソナタ第12番をフィルアップしたものです。はじめの第18番はモノラル録音なものですから、演奏自体は優れたものだと思うのですが、正直に言って、ステレオ録音の第22番が始まるときの、オーケストラの圧倒的な見事さに感動してしまいます。

第1楽章、アレグロ。いかにもモーツァルトらしいオーケストラの始まりで、ピアノが入るとご機嫌な気分。転調しながらコロコロとよく動きまわる指が、さっそうとした若い作曲家兼演奏家を思わせます。カサドシュのピアノの音がきれいです。
第2楽章、アンダンテ。思索的な、と言えば良いのか、瞑想的な、というべきか、ゆるやかな楽章です。劇的な深刻さはありませんが、充分に美しいモーツァルトの緩徐楽章です。
第3楽章、アレグロ(ロンド)。軽やかなロンド楽章です。中間部のカンタービレの部分ではクラリネットが活躍し、再び華やかではやいロンドに戻りますが、このオーケストラ部の見事なこと!これは、コロンビア交響楽団と記載されてはおりますが、ほぼ間違いなくクリーヴランド管弦楽団だと思います。

1897年生まれのジョージ・セルと、1899年生まれのロベール・カサドシュとは、若い時代からの仲間だったのでしょうか、作曲をしていた点も共通。モーツァルトの協奏曲ではカーゾンなどとも録音を残していますが、一番多く録音したのがカサドシュとでした。クリーヴランドには彼の名前を冠したコンクールもあるのだとか。きっと気が合い、信頼できる相手だったのでしょう。演奏からも、大変に立派なオーケストラ部に対して、むやみに気負ったり対抗意識を燃やしたりといったレベルを超越した、信頼しきった感じがします。下世話に言えば、「あいつならまかせられる」という信頼感、なのかもしれません。

解説書には、第18番が1956年11月11日に録音されたのに対し、この演奏はそのちょうど三年後の1959年の11月13日に録音された、とクレジットされています。フィルアップされたソナタ第12番のほうは、1964年の録音です。
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