電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

柴田治三郎『モーツァルト』を読む

2010年04月09日 06時15分03秒 | 読書
岩波ジュニア新書で、柴田治三郎著『モーツァルト』を読みました。「運命と闘った永遠の天才」という副題を持つコンパクトな本です。この新書のシリーズは、碩学がそれぞれ得意の分野で、中・高校生向けにやさしく書き下ろしたものが多く、当方のような素人音楽愛好家には、あまり専門的すぎずにちょうどよく、いろいろな分野で入門的に読むにはたいへんありがたいものです(^o^)/

構成は次のとおり。

I 生い立ち
II 家族づれの演奏旅行
III イタリア旅行
IV ザルツブルグ時代
V アウグスブルグとマンハイム
VI 二度目のパリ
VII 大司教との決裂、結婚
VIII 新婚生活
IX 活躍と窮乏
X 創作の絶頂、孤独
XI 残照、終焉
年譜

著者は東北大学で長く教えたドイツ文学者で、『モーツァルトの手紙』などの翻訳も多数あり、本書でも、とくに手紙の内容や位置づけ等はさすがの分析です。

モーツァルトは、幼い頃から父親の英才教育を受け、イタリア等を旅行して様々な音楽を吸収し、天分を発揮していきますが、失ったものも大きいように見えます。たとえば同年配の子供の付き合いの中で学ぶような力関係や諦め(挫折)経験などです。小学生は小さな大人ですが、中学生は自我を再構成する時期とも言えるでしょう。大人の世界の中で自我を再構成することを余儀なくされたわけで、特異な性格はそんな事情によるものかな、などと感じます。

ウォークマンE で、レオン・フライシャーのピアノ、ジョージ・セル指揮クリーヴランド管によるピアノ協奏曲第25番を聴きながら、こうした音楽・録音がパブリック・ドメインになることの恩恵を満喫しつつ、出先の安ホテルの一室で、本書を読み終えました。

写真は、今が花盛りのサンシュユの花です。
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