電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

サン=サーンス「ヴァイオリン協奏曲第3番」を聴く

2010年04月12日 06時22分47秒 | -協奏曲
転勤や引越しに加えて春の農作業もスタートで、車の通勤用CDの積み替えまで頭がまわらず、ずいぶん長く同じCDを聴き続ける事になってしまいました。それがサン=サーンス「ヴァイオリン協奏曲第3番」、チョン・キョンファ(Vn)、ローレンス・フォスター指揮ロンドン交響楽団による1974年のデッカ録音です。

第1楽章:アレグロ・ノン・トロッポ、ソナタ形式。弦のトレモロの中で、独奏ヴァイオリンが決然と情熱的な主題を奏し、曲が始まります。第1主題が様々に変奏され、音楽が大きな身振りで進む中で、第2主題は伸びやかに歌われる旋律です。
第2楽章:アンダンティーノ・クアジ・アレグレット、ソナタ形式。歌うような、あるいは夢見るような美しい旋律を持つ緩徐楽章です。曲の最後の、ヴァイオリンのフラジオレットと木管のユニゾンがとても印象的です。
第3楽章:モルト・モデラート・エ・マエストーソ~アレグロ・ノン・トロッポ、ロンド形式。無伴奏のヴァイオリンが激しい主題を奏し、オーケストラがこれに応える序奏で始まり、主部では独奏ヴァイオリンが鋭く激しいロンド主題を提示します。明るくはずむようなところや、聖歌ふうの旋律なども現れ、最後は華々しく結ばれます。

サン=サーンスは1835年生まれだそうですので、1880年に作曲、翌年1月にサラサーテの独奏によって初演されたときは、ちょうど40代半ばの年齢です。作曲家の個人的な年齢よりもむしろ、ヴィルトゥオーゾの時代にふさわしい内容・形式の音楽になっていることに注目すべきなのでしょう。サロンや宮廷にはもう収まりきれない、劇場や大ホールが前提となる、市民社会の音楽。

チョン・キョンファは1948年生まれだそうです。この録音の新譜発売当時、おおよそ同世代の音楽家に対する破格の扱いに、少々びっくりしながら聴いたものでした。解説書に「激しさと艶やかなカンタービレ」とありますが、まったくそんな印象でした。録音後30年以上経過した現在も、アルゲリッチらと組んだシューマンの室内楽などで、激しいヴァイオリンを聴かせております。健在、というべきでしょう。

風邪で寝込んでおります。ただいま、無線LANを生かし、寝床の中でLinuxネットブックにて修正投稿です。
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