覚えにくい曲名と言われたら、真っ先に挙げたくなるのが、モーツァルトのモテット「エクスルターテ・ユビラーテ」K.165でしょう。「エクスタルーテ」だったか「エクセラルーテ」だったか、なんとも紛らわしいことです。短期記憶がしだいに怪しくなりつつある年代に入り、無理やり語呂合わせで手がかりだけは記憶しようと、「エクセル、ユビキタス、カフェラテみたいな名前」のモテットという具合に、かろうじて頭のどこかに入れるようにしていますが、「アレルヤ・コーラスで有名なモーツァルトのモテット?ああ、エクスルターテ・ユビラーテね。」などとサラリと言ってみたいものです。どうも、当方には無理な相談のようで、日本語の題名「踊れ、喜べ、幸いなる魂よ」のほうが、はるかにわかりやすく言いやすいと感じます。
第1楽章:「エクスルターテ・ユビラーテ」。アレグロ、4分の4拍子、ヘ長調。添付のリーフレットにある解説(武石みどり)によれば、歌のパートをソロとする協奏曲のスタイルをとっているそうで、なるほど、です。レシタティーヴォ「Fulget amica dies」が続きます。このあたりも、いかにもオペラ的です。
第2楽章:「Tu virginum corona」。アンダンテ、4分の3拍子、イ長調。
第3楽章:「アレルヤ」。アレグロ、4分の2拍子、ヘ長調。解説によれば大きく三つの部分からなり、各部分の継目に長いコロラトゥーラ楽句がはさまれる、とあります。
作曲年代は1773年の1月で、第3回イタリア旅行の途中に、オペラ「ルチオ・シッラ」の主役のカストラート歌手のために作曲し、ミラノのテアチノ教会で初演されたそうです。実際に、歌ったのは去勢歌手であるカストラートだったそうですが、曲の内容が、コロラトゥーラの技巧がコロコロと、まるでオペラの音楽のようです。うーむ、謹厳なるカトリックの教会で、オペラ調の技巧をふんだんにふりまく宗教音楽が響くというのは、けっこう違和感があったのでは。それは多分、当地の法事で、住職が演歌風にコブシをコロコロきかせてお経をあげるようなものではなかったかと思われます。17歳のヴォルフガング君、音楽的には素晴らしいが、生真面目な司教さんたちには案外不評だったんじゃなかろうか。ザルツブルグの大司教も、いささか苦々しく思ったのかもしれず、後年のモーツァルトとの不和も、案外このあたりに端を発しているのかもしれません。
それでも、音楽はいきいきと躍動的で、宗教的な敬虔さをあまり要求しない当方には、若いモーツァルトが書いた宝物のような音楽と感じます。とりわけ最後の「アレルヤ」は、ヘンデルの「ハレルヤ・コーラス」とはまた違った意味で、喜ばしい賛美の気分に満たされます。
演奏は、トン・コープマン指揮アムステルダム・バロック管弦楽団及び合唱団。1994年12月に、オランダのウードカルスベルで収録された、エラートによるデジタル録音です。CD:WPCS-21144。
【追記】2023/09/20
YouTube で、ジュディス・ラスキン(Sp)、ジョージ・セル指揮クリーヴランド管による演奏を見つけました。1964年5月、本拠地、クリーヴランドのセヴェランス・ホールにおける録音です。
Mozart: Exsultate jubilate, Raskin & Szell (1964) モーツァルト エクスルターテ・ユビラーテ ラスキン&セル
第1楽章:「エクスルターテ・ユビラーテ」。アレグロ、4分の4拍子、ヘ長調。添付のリーフレットにある解説(武石みどり)によれば、歌のパートをソロとする協奏曲のスタイルをとっているそうで、なるほど、です。レシタティーヴォ「Fulget amica dies」が続きます。このあたりも、いかにもオペラ的です。
第2楽章:「Tu virginum corona」。アンダンテ、4分の3拍子、イ長調。
第3楽章:「アレルヤ」。アレグロ、4分の2拍子、ヘ長調。解説によれば大きく三つの部分からなり、各部分の継目に長いコロラトゥーラ楽句がはさまれる、とあります。
作曲年代は1773年の1月で、第3回イタリア旅行の途中に、オペラ「ルチオ・シッラ」の主役のカストラート歌手のために作曲し、ミラノのテアチノ教会で初演されたそうです。実際に、歌ったのは去勢歌手であるカストラートだったそうですが、曲の内容が、コロラトゥーラの技巧がコロコロと、まるでオペラの音楽のようです。うーむ、謹厳なるカトリックの教会で、オペラ調の技巧をふんだんにふりまく宗教音楽が響くというのは、けっこう違和感があったのでは。それは多分、当地の法事で、住職が演歌風にコブシをコロコロきかせてお経をあげるようなものではなかったかと思われます。17歳のヴォルフガング君、音楽的には素晴らしいが、生真面目な司教さんたちには案外不評だったんじゃなかろうか。ザルツブルグの大司教も、いささか苦々しく思ったのかもしれず、後年のモーツァルトとの不和も、案外このあたりに端を発しているのかもしれません。
それでも、音楽はいきいきと躍動的で、宗教的な敬虔さをあまり要求しない当方には、若いモーツァルトが書いた宝物のような音楽と感じます。とりわけ最後の「アレルヤ」は、ヘンデルの「ハレルヤ・コーラス」とはまた違った意味で、喜ばしい賛美の気分に満たされます。
演奏は、トン・コープマン指揮アムステルダム・バロック管弦楽団及び合唱団。1994年12月に、オランダのウードカルスベルで収録された、エラートによるデジタル録音です。CD:WPCS-21144。
【追記】2023/09/20
YouTube で、ジュディス・ラスキン(Sp)、ジョージ・セル指揮クリーヴランド管による演奏を見つけました。1964年5月、本拠地、クリーヴランドのセヴェランス・ホールにおける録音です。
Mozart: Exsultate jubilate, Raskin & Szell (1964) モーツァルト エクスルターテ・ユビラーテ ラスキン&セル
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