第一章:飛田に行きましたか/ 第二章:飛田を歩く /第三章:飛田のはじまり /第四章:住めば天国出たら地獄/ 第五章:飛田に生きる /第六章:飛田で働く人たち
で構成されるこの書はぐいぐい引き付けてくれる。ドキュメント的なノンフィクションの面白さで読ませた。飛田の歴史と現在、そこにすんでいる多くの女性たちの素顔もまた「物語」として織り込まれていて読みやすい書物の構成である。話題の橋下氏がその飛田新地料理組合の顧問弁護士だったことも自ずと明らかになっている。飛田のひきておばさんの姿も興味深い。飛田で働く沖縄出身者もいるのだと想像できた。疑似恋愛のようなひと時、20分、30分の料亭の仕組みがある。(経営者、おねえさん、曳き子のおばちゃんで成り立つ。料亭の数は158軒、経営者は140人余り、おねえさんは昼夜合わせて推定450人、おばちゃんは推定200人。経営者には土地建物を自己所有している人と、家主(かつての経営者かその子供)から借りている人がいて、どちらも飛田新地料理組合に属している。)井上さんの10年にわたる飛田とのかかわりが体験・経験(発見)、資料を通して肉付けされながら、実在の関係者との生身の対話からジワリと飛田のありようが伝わってきた。売買春の日本の歴史、1958年の売春防止法以前と以降の風景も含め読ませた。戦前と戦後もまた異なる風情を見せる。
普通のエリートサラリーマンが、公務員が、会社員が求める空間。人は多面体だ。貧困の連鎖だとあとがきで記す井上さんである。2011年10月発行からすでに8刷である!