志情(しなさき)の海へ

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「72’ライダー」劇団O.Z.E は濃密でテンション高く会場が最後静まり返った!終幕に国会議事堂の映像を出さなかったのが残念!

2022-05-09 06:41:19 | 沖縄演劇
  
【写真は、上原さんが国会議事堂の扉に激突した時被っていたヘルメット】

50歳になった復帰っ子たちが同窓会の後で、会に参加しなかったやーすー(平安信行)のバイク屋にやってくる。てっちゃん(新垣晋也)がリードしながら会は盛り上がっていく。以前公演した那覇市テンブス館より劇場が広々として、舞台美術もなかなか良かった。

 冒頭でやーすーがギターを弾いて歌った歌は2度繰り返された。
≪戦争が終わってぼくらは生まれた。戦争を知らずにぼくらは育った。大人になって歩き始める。平和の歌を口ずさみながら。僕らの名前を憶えてほしい。戦争を知らない子供たちさ≫これは、実際に上原安隆さんが自分の部屋でギターで弾いていた歌だと、真栄平さんは一枚のメッセージで紹介している。
(戦後ゼロ年の沖縄では、戦争は常に身近にある。巨大な米軍基地にさらに自衛隊基地が居座っている!)

同窓会に集った面々の織りなす日常の物語が延々続くように思えたが~。
およそ20年間、劇団O.Z.Eが蓄積した演劇活動の時間の経緯の中で、新垣さんを始め、舞台を懐に抱いたように語り、動く。面白くて笑える。演技に年輪が感じられたのは良かった。彼らの過去を振り返る中で、バイクで疾走したり、ディスコで踊りまくったり、そしてコザ暴動があり、祖国復帰記念行事がある。語りの中でそれらが挿入されたライブ感は良かった。緻密な、濃密な舞台になった。

何気ない会話の中に50年が見据えられている。復帰っ子が背負ったものが、沖縄の現代史として浮かび上がっていく。バイク屋のやーすーと息子勇斗親子関係もまた、衝撃的な事実、国会議事堂正面の鉄の扉にバイクに乗って激突死した上原安隆さんに繋がっていく。

自分の意思で動き、自由にコントロールできるバイクや車がある。(それもGPSとリンクして未来は自動運転になるのか?)

息詰まるような、テンションがそこに向かっていく。復帰っ子のヤースーの寡黙さが実在した上原さんのイメージと重ねられているのだが、脚本としては、本筋と伏線という構図をうまく描けていない。メタファーとしてのバイクが主人公で、ヤースーのキャラクターに集約されている。

演劇の最後の場面で、実際の26歳で国会議事堂に激突する前の上原さんと運送業社長のお嬢さんが登場する。やーすーが上原さんを演じる。それだけで十分という解釈も成り立つかもしれない。

この舞台をはじめて観た時、ステージの上のナナハンとそのエンジンの騒音だけで感極まった思いがした。今回「なはーと」のステージを広々と使った。なんとナナハンが5台も並べられた壮観さがあった。

上原安隆さんがなぜ国会議事堂の扉に激突したのか?日本とその背後の権力への大きな絶望と怒りがあったのだ。沖縄の魂を怒りを背負って彼は突っ走った。上原さんの怒りと絶望と苦しみが、演劇作品の中で記憶として繰り返し上演されることは、歴史の再生であり、足元を見据える大きな契機になることは確かに違いない。

台本の構成にもっと伏線として上原さんとオーバーラップさせてほしいと思ったのだが、「ほのめかし」でいいのかなと、寡黙なバイク好きなやーすーのキャラに象徴されていた。

今回前栄平 仁さんが書いた「メッセージ」がすべてを語っている。そして「オキナワ・シンデレラ・ブルース」もそうだが、「72’ライダー」もまた啓蒙的なスタンスだということが印象的だ。オキナワの現代史を時系列に観客に訴えるスタンスである。ドキュメント風の舞台創りでもある。


目取真 俊の『沖縄「戦後」ゼロ年』は2005年に出版された。復帰50年目の今年は、『沖縄「復帰」ゼロ年』として『世界』が特集を組む。

実に多くの復帰50年を捉え返す講演やシンポジウム、記念式典やイベントが目白押しだ。しかし辺野古の埋め立ては続いている。コロナ禍に続くロシアーウクライナ戦争(紛争/侵略)が続いている。ロシアとアメリカ、NATOの対立構図も浮かび上がっている。日本はアメリカに加担している。そしてわたしたちが住む沖縄は陸、海、空そのほとんどがアメリカ軍の演習場になっている。

米軍基地の問題は現在形だ。上原さんの無念の思いは払拭されていない。



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「72’ライダー」5/7.5/8  3回公演
作・演出:真栄平 仁
出演
新垣晋也/平安信行/金城理恵/秋山ひとみ/上原一樹/渡嘉敷直貴/真栄城弥香/平良直子/うどんちゃん/具志堅興治/金城道 ← 配役とキャストは丁寧に紹介してほしい。

【劇団O.Z.E】プロフィール
1999年1月、前年末に解散した漫才師ダーティビューティの真栄平仁(ひーぷー)を頭(かしら)に3人で結成。「今、自分たちがリアルに感じていること」を中心に、この世にまたとない「絶世」のエンターテイメントとして創りあげることを目標としている。「舞台を観る」という習慣が定着していない沖縄を変革するために、従来の「演劇」スタイルにこだわらず、観に来てくれたお客さんのエネルギーとなる、より刺激的で生き生きとした演劇に挑戦している。2011年より開催している「日付変更線」は、他団体の役者やフリーで活動している役者とともに、県内初の3週間のロングラン公演(平日含め23公演)を行い、毎年1000名を超える観客を動員。
コロナ禍で、劇場での舞台中止が続くなか、舞台の映像配信・映像作成配信・映画監督など新しい分野にも踏み入れ、舞台と映像の両方に特化した劇団を目指し、活動を続けている。
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以下は2013年に観た時の印象批評です。参考に!

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