〈稚児=美少年と老僧〉
稚児のものがたり、で、折口信夫の話が出てくる。弟子に挑んだ折口は、
「お前は優秀な弟子なのに、わたしのいうことを聞かないと、わたしのほんとうの思想は伝わらない。伝統とはそういうものなんだよ」と、語ったとのことー。
白洲は「先生は本当のことを言われたのだ。究極のところ、伝統というものは肉体的な形においてしか伝わらない。でなければ、「血脈」というような言葉が生まれたはずもない。」
一方で兼好法師の『徒然草』をあげる。
「男女の情もひとへに逢ひ見るをば言ふものかは」(男女の情というものは、現実に逢うことだけが重要なのではない、逢いたくても逢えないでいるほうがいっそう哀れが深いし、男女の情というものが身に染みてわかる、そういっているのである。)
と、つづくエッセイ集だが、確かに引き付けられる。
「折口はホモだったため直接行動に出るしかなかったのであろうが、それはそれとして伝統についていわれたことは、真実である。」
のように続く。
ただ表象の両性具有に関心があるのだが、実在の越境的な両性具有の美としての少年の美は、若衆芸に重なるが、それが目的ではない。