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前にキャンプシュワーブ内から反辺野古新基地(埋め立て)住民のゲート前の様子をヴィデオ撮影して任を解かれた元大阪大学大学院教授ロバート・エイルドリッヂ(太平洋基地政務外交部次長)のことを取り上げたことがあったが、彼がヴィデオを通して話していた、海兵隊と地域の交流=アメリカ文化や、軍隊プレゼンスへの広報活動の一環として出されているのらしいいパンフを法文研究棟のチラシなどが置かれているスタンドから見つけた。
海兵隊や陸軍、空軍とそれぞれの組織で地元住民との『親しい隣人』ソフトプログラムがなされているのは戦後70年の歴史があるのだろう。戦時中の収容所での芸能の推進から始まる米軍の一連の地域住民慰撫政策、ソフトプログラムの歴史はそれなりに、すでにその研究が冊子になっているに違いない。たまたまスタンドに置かれているパンフをみて、驚きが走ったが米軍占領期の『守礼の光』のようにずっと継続されていたのだね。琉米文化会館も以前あった。龍潭(りゅうたん)沿いにあったその施設はなかなかいい雰囲気だったと覚えている。アメリカの沖縄への駐留が軍隊としてのハードの顔と軍隊内部の社会的機能としての一連の組織のありようは、その内部の実態があまり表の沖縄の新聞でも報道されないので、よくわからない。例えばアメリカ軍基地内で高校生による「八月十五夜の茶屋」の舞台公演があることを知ったのもたまたまFENラジオを朝ドライブしながら聴いていて知った。タイミングよくその舞台を見ることができたが、基地内部の面白い公演など、結構あっても、注意を向けない限り全く無縁というのが実態だろう。
基地のハードとソフトな部分があり、一般市民としてのアメリカ人は良き隣人の顔をもっている。兵士としては彼らは様々な軍事訓練に取り組んだり、後方支援部隊としての活動も常時基地内では為されているわけで、情報傍受の分析など、ことアジアに関しては沖縄に実在するインテリジェンスなど凄い力を発揮しているに違いないのだ。
沖縄のメディアの情報や沖縄の動向は細かく英語に翻訳されてペンタゴンに送られているわけである。それらを上層部が見て米国議会の議題にも上るわけだが、巧妙な情報網は張りめぐらされているわけだ。その上でペンタゴン幹部は『辺野古への普天間基地移設は日米安保に最大のメリット』と世界に発信するのである。アメリカの艦隊が中国の人工島の設営ともからみ南シナ海を恣意的に運行するということにもなっていく。
米軍の沖縄へのプレゼンスが、あまり経済的効果を生み出さなくなって久しい現実があり、単に日米の防波堤的機能を強化せんとするシステムが沖縄にとって有利な未来像を結び得ないのが昨今の常識である。普天間は無条件閉鎖・撤退が望ましい。世界で一番危険な基地は即時閉鎖・撤退してほしい。それが道理であるに関わらず、沖縄内の盥回しを是とする日本政府の住民の意思を踏みつけるやり方は、道理が通らない。翁長知事はそうした日米のマイノリティー踏み付けの実態に、民主主義国家として恥ずべきではないか、と世界に訴えている。
チョムスキーのような知性人が辺野古埋め立てに異議を申し立てている。オリバーストーンは米国史の暗部をえぐった現代史を物している。彼ら良識的知性人の理性は信頼できる。しかし身近な心温まる米軍と沖縄住民の交流は、内から関係性のありようを風通しのいいものにせんとする米軍の組織的活動の一つだが、それに異議を唱えようとは思わない。←それはおかしいという声も聞こえてくるがー。米軍人の内部は100カ国以上の国籍で成り立っている。麗しいアメリカのグリーンカードを求めて軍隊に入った若者たちが多いのである。夫々の素性は、持てる1%のアメリカの中の99%の一部であり、しかも貧しい国々からアメリカにやってきて市民権を得るために入隊を選び、必死にサバイバルせんとする人々が多いという事実もある。米軍そのものがグローバル人材のカレイドスコープのショーケースでもあるのだ。傭兵的な様相も見える米国軍隊のありようなのかもしれない。そこはまたマルチエスニックな社会であり、マルチ文化が花開き、軍隊のポリシーに沿った規範社会があるのである。前線に送られ殺し殺される修羅を経験したり、そして休養のためにまた沖縄に戻ってくる彼らでもある。
米軍基地を否定する立場に変わりはないが、地域住民との彼らの交流は異文化接触の末端、あるいは先端なのかもしれない。これを書いているときも身近な普天間基地辺りから爆音が聞こえてくる。F22などが飛んだのかもしれない。沖縄を庭にして爆音を振りまく米軍基地そのものはない方がいいに違いない。爆音に無意識に脅され続ける日々は変わらない。無意識の傷が見えなくとも大きくなっていく。
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携帯を落としてしまった米軍軍属の少女が、高速入り口で雨にぬれないようにビニールで包んでベンチに置かれていた自らの携帯電話を見つけ、そこに置いてくれた沖縄人への感謝の気持ちが綴られた文章が以下にある。←いい話だね!ウチナーンチュの肝心の優しさになだそうそうだね!