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(Kenilworth のHoliday Inn 手前にある時計塔とお花)
英国は思いがけないところで雨が降る。IFTRが準備したショルダーバックには何と参加者全員に笠が用意されていた。案の定、思いがけない所で雨が降っている。傘を差しながら広いキャンパスの一つMillburn Houseに行くと、堤さんが時間を間違っていて「絵画から演劇へ」の発表が聞けなくて、同じ時間帯で20も異なるテーマの中で、興味深かったDigital humanities in Theatre Researchの研究発表を拝聴した。専門分野の方々の研究集会だが、誰でも歓迎の空間である。率直に言って面白かった。ネットアーカイヴはこれからかなり重要な役割を担っていくことは、確かだと言えよう。
ハーバード大学教授のVisualizing Broadway:A Project in the Digital Humanitiesでブロードウェイのこの間の全作品(公演)をデータ化してグラフでその結果を見せた。時代によって公演の傾向や作風、観客動員、ジェンダーなどが一目にわかる。そのディテールはさらにまた分析がなされていく。ツイターでもどなたかが勝手に中身の詳細な分析をして提示するのだが、驚いたのは、圧倒的に役者が女性より男性が多いということである。なぜか?さらに彼は50年代は停滞期だと語った。八月十五夜の茶屋が1000回以上も上演されていた53年から54年にかけては必ずしも全体の歴日の中で盛ん、というわけではなかったのである。朝鮮戦争が起こっていた時代でもある。全体のビジョンと共にその背景(時代相)が見える。成功の理由が実は観客の趣向でもあるのだが、音楽であり舞台美術である事もあるとの話なども、面白かった。グラフ化されたデーターからさらに、細かい分析がなされていく。
3DVisualization of Sources for Barroque and Romantic Scenic Spaces by フランスの教授の発表もすでにこのようなプロジェクトが推進されていることが、なるほどと思った。舞台美術、舞台監督、空間と演技、全体の構成、動きに大いに生かせる。
最後にポルトガル人の研究者は,
Digitai Resources in Theatre Research:A Look into the Databases of the Centre for Theatre Studies of Lisbonの取り組みを紹介した。16世紀、18世紀のポルトガルの舞台芸術に関する実に詳細なデーターのデジタル化に取り組んでいる。日本の文化庁のデジタルアーカイブがいかに初期的な試みかが、わかる。ポルトガルの文化伝統の演劇を世界に発信するために古いテキストからその中身の詳細な説明が網羅されている。今後それぞれの国家や地域で独自のデジタル発信がなされていくのだろうが、基礎データー=入門としてだけではなく、専門家にも、取り組みやすいデーターライブラリー機能(役割)が追及されている。いいね!リスボン大学の発表者は、ポルトガルのパフォーミング・アーツはあまり知られていないからと、謙虚に話していた姿が印象に残る。英語圏以外の研究者の英語発表は、母国語が英語でないゆえに必ずしも流暢ではない。ハーバードの教授のなめらかな英語とはまた異なる味わいがあるのは確かだね。
今頃またインター・カルチャーリズムが気になっている。模倣、ローカライズ、そしてインターカルチャーライズである。英国の研究者はシェイクスピア絶対のような誇りが表に出てしまうね。世界の演劇において真っ先に、ギリシャ、インド、日本や中国がきて、それからシェイクスピアの英国やモリエールのフランスがくるのでは、と思うのだが、-しかし対話劇として、シェイクスピアのインパクトは強いね。今日8月1日からエジンバラの演劇祭が始まる。50,000の参加作品があるとのことだ。じっくり見たいが、今回は厳しい。
街の中心に必ず建っている時計塔