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松田さん夫妻、貴重な芸能音源発見、CD化し保存←戦前の歌者調査から!

2016-01-27 23:02:10 | ジュリ(遊女)の諸相:科研課題

松田さん夫妻、貴重な芸能音源発見 CD化し保存

 
古典音楽や民謡、組踊などの音源を南風原文化センターに寄贈する松田良一さん(左端)=20日、同文化センター

 【南風原】神奈川県横浜市で芸能活動をしている松田良一、美律枝さん夫妻が20日、南風原文化センターを訪れ、舞踊研究所から見つかった古典音楽や民謡、組踊が記録された音源を同センターに寄贈した。1948年ごろから70年までの間に記録されたとみられる。辻の芸能者を研究している仲村善信さんが、川崎市などで琉球芸能の普及に貢献した、山入端つるさんの歌声を確認した。

 松田夫妻は神奈川で琉舞の普及に取り組んだ佐久川昌子さんに師事。現在は佐久川さんの舞踊研究所を継ぎ、沖縄舞踊渡嘉敷流昌扇会の師範として活動している。
 ことし6月、仲村さんからの依頼で音源を探していたところ、稽古場の押し入れから、箱に保管されたオープンリール25本が見つかった。
 松田良一さんは「師匠の佐久川は山入端さんの地謡で踊っていた時期がある。沖縄芸能の貴重な宝であってほしい」と話した。
 山入端さんが歌っているのは8曲ほど、他は男性や男女一緒の歌声が記録されている。仲村さんは「1948年ごろから70年までの間に録音されたと推測している。山入端さんの声にほぼ間違いない」と語った。
 見つかった音源は南風原文化センターが業者に依頼し、CDに録音した。同センターは古典音楽や民謡の歌声を記録したSPレコード600から700枚を保管している。同センター学芸員の平良次子さんは「誰でも聴けるように検索機能を整え、整理していきたい」と話した。

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この写真には誠実な表情の仲村先生が写っています。この発端はこういうことです。実は2015年3月10日に科研プロジェクトの二回目のシンポジウム「沖縄の文化表象にみるジュリ(遊女)の諸相」partII≪沖縄芸能に見る芸妓の表象/表象されたジュリ≫を開催した後で、しばらくして沖縄タイムスの牧志さんを通して「仲村さんが是非お話したいということです」のメッセージが届いたのでした。

お話すると、なんとボイストレイナーの実績を持っておられて、もちろん琉球古典音楽に造詣の深い方で、大学時代から古典音楽に親しまれていたのでした。氏によると、古典音楽を稽古している女性が最近増えているとのことです。そうした女性たちのための古典音楽レッスンや指導を専門的にされていて、医学部の先生と喉や声帯についても本格的に研究され、また歌や声、音の分析もそれなりのソフト(分析機器)を使用してやってきた方でした。驚きました。そしてとても幸いに思いました。私自身が筝や三線の稽古をやったことはあっても1年内にやめてしまっていて、琉球芸能の核(コア)となる琉球音楽のセンスも知識も弱いことが、よくわかっていたからです。仲村先生とのお話を通して古典音楽の歴史に少し足を一歩踏み込んだのです。

わたしは琉球・沖縄の女性芸能者の歴史を、彼女たちが担ってきた芸能史をしっかり評価すべきだとの立場で科研研究に取り組んでいたので、女性の古典音楽奏者が多くなっているという事実は、別に驚きはしなかったのですが、というのは、仲村先生はとても実証的な方で、音源がないと科学的なアプローチで戦前の女性たちの声や歌やリズムを評価できない厳しい立場ですが、この間のもう良く知られた資料から、すでに辻や仲島の女性たちが遊里で組踊や古典女踊、二才踊りなどを踊っていたことは疑いようもなく、それは絵画や写真からも明らかだからです。遊里の座敷では絶えず芸妓たちがそして雛妓たちが踊って歌三線を奏で、かつ筝曲を弾いていたのでした。

100年どころではなく、250年以上もです。三線の方が長いのですが、しかし歌舞にあふれていた遊里だったのですね。ということで、音源からすべて実証していかれる仲村先生とは異なるのですが、具体的な音源を大切にされる姿はまさに精密な分析が常に問われているあらゆる研究のパラダイムそのものでした。ご一緒に山入端つるさんの音源を求めて一雄さんにお会いしたり、その他、の方々も含め、しかし仲村先生はご自分の論稿へ『一直線』に突き進んでいたのです。

山入端つるさんの音源を求めて神奈川県の川崎に行かれて、3人の方々へのインタビューをされるということで、共同研究者として仲村さんにフライトと宿泊料金を科研費から提供しました。(謝金なども)実直な氏はインタビューをCD化し、かつ写真やジャーナルなども含めた史料を手渡してくださいました。佐久川昌子さんとの触れ合いはその流れの中で偶然の発見と驚きのように進展していったのです。頑なにつるさんの音源を求める仲村先生の情熱のたまものでした。

川崎でインタビューされた方々を通して偶然見つかったオープンリール25本が沖縄に送られてくることになったのです。戦後山入端つるさんは佐久川昌子さんの地方をされていました。そのCD化されたオープンリールの古典や民謡、歌者の特定をされたのも仲村先生です。その中に優れた女性歌者がいることも分かりました。3月19日の締めのシンポジムで1時間、仲村先生はご自分の発見と研究の一端をお話されることになります。

SPレコードに吹き込まれた多くの女性たちの素顔も分かってきました。発見が再評価に繋がっていきます。「音」「音源」の凄さが浮かび上がっていくことになるでしょう。この間軽んじられていた戦前の少なからずの女性芸能者の「歌の力」「音楽の力」が滲んできますね。

およそ200ページの報告書には仲村先生のすでに完成された論稿が70枚余収録されます。しかし無料で配布するのは100部だけです。戦前の女性歌者の魅力を味わいたい皆さんは是非3月19日、博物館・美術館講座室へおいでください!


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