お能をたしなんでいる雅恵先生が通訳!こなれていて、さすがでした。
お能の舞台の構成や約束事、その歴史から、林本さんは簡潔にお話ししてくださり、また能面の御紹介も含めとても良かったです。お能の基本的な姿勢の理由が刀を受けて立つということなど、その姿勢、また歌舞伎と異なり、観客席を埋めたのが日本刀を挿して歩く武家階層だったということも大きな特徴があるようです。失敗は許されない厳しい三間四方の演技です。豊臣秀吉がお能を親しんだので、こぞって士族層はお能を取り込んだの説明も分かり良かったです。
田楽の始まりは水田での労働であり、労働の場から歌や躍りが始まったのは、世界共通かもしれませんね。フォークミュージックや踊りがもたらした原型の姿がそこにまたあるのも事実なのでしょう。芸能のチカラとは何でしょうか?
組踊の芸・型において、お能ほどの厳しさがあったかどうか、6回の冊封使の面前での公演、実質的に25回の数字があります。25回の公演です。殺される緊張感が絶えず能舞台にあった空間と、刀を持たなかった琉球王府の士族層役人の国の威信をかけた芸能の力の違いはどうだったのだろうか?近世琉球の記録から何が見えてくるのだろう?
どうも琉球音曲がやはりその基軸にあったのだろうということは、考えられます。比較研究はいろいろなされていますね。見えないところが見えてくるのはいいです。崑劇研究者のご発表もあり、中国演劇の影響関係ももっと掘り込められたらいいですね。
着付けのデモンストレーションです。やはり衣装と仮面そのものの美がやってきます。
般若面は女性の面です。うらみやねたみや悪意を持つ女性の面です。
士族層の面は戦いに敗れた男の面が登場しましたが、敗れた者の恨みや呪いや痛みを祓う祈りのような舞台でもあるのですね。
歴史は満たされない思いの深い怨念がまたさまよっているゆえにその魂を悼む芸が生まれてきます。
井戸良助さま
林本 大さま
謝謝!
『観世寿夫著作集全四巻』を以前購入して一部読んだのですが、あらためてまたその全集を紐解きたくなりました。観世さんはかなり深く、広い感性の持ち主で、ギリシャ悲劇にも挑戦されていたと記憶しています。
****************(以下は備忘録)
京劇と崑劇はどちらも中国の古典演劇の流派ですが、発祥した時代と場所がちがいます。
京劇は、清の時代(18世紀頃)安徽省で発祥しました。北京を中心に発展した為、北京の京をとって京劇と呼ばれます。
また、崑劇の影響を受けながら崑劇を凌ぐ発展をし、中国の「国劇」に認定されました。
崑劇は京劇より古く、元の末期から明の初期(14世紀頃)崑山一帯で発祥しました。
現在の江蘇省蘇州市東部です。昔の地名から崑劇と言われます。
崑劇は京劇に色濃影響しながら、京劇の発展に伴い衰退を見せますが、2009年にユネスコ無形文化遺産に登録されました。
内容の違いは、京劇の方がやや現代的で(発祥の時代が新しい為)現代人にもわかり易い題材が多いです。
喜劇性、エンターテイメント性が高いのも京劇です。
中国政府の政策支援の差もあり、海外公演や来日公演が多いのは京劇で、崑劇はあまりありませんね。