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創作舞踊の面白さ!第2回創作舞踊大賞入賞作品と招待創作舞踊

2011-11-27 00:38:39 | 琉球・沖縄芸能:組踊・沖縄芝居、他
  (大田守邦さんの玉城盛義襲名記念公演のリハを見せていただいた。ガァウディさんと照喜名先生、幸喜先生、秀子先生)

2010年度から始まった創作舞踊の競演は何かと話題が多いようだ。昨年と比べて今年は小ぶりな感じがする。作品は創作エイサーと新崎恵子さんのニライカナイ幻想のような舞踊劇が奨励賞だった。今年は去年の迫力は失せていた。創作舞踊劇のような雰囲気ががらりと変わって、一人舞踊が奨励賞である。入賞が「チバリウチナー」である。

高嶺美和子さんの『子守節(クヮムイブシ)』が奨励賞である。幻想的な命の初源をきらびやかな衣装で身を包んで躍った。静かにおごそかに、そして時代を辿っておもろの古謡の時代、そしてきらびやかな衣装を脱ぎ棄てて近世の母と子の民謡の世界を一人で歌いながら躍った。テーマは命と母子の絆か?入選の「チバリウチナー」は戦場の子供や母を描き、ミルク世の親子を躍ってみせた。母と子が大きなテーマになっていると見た。

しかしこの創作舞踊は何を目的にしているのだろうか?時間は15分?舞踊劇?「花風」や「むんじゅるー」などの新しい雑踊りをターゲットにしているのか、それとも舞踊劇なのか?曲は全く新しい創作であるべきなのか?従来の古典や民謡に歌詞だけ新しく創作すればいいのか?などなど、興味をもって見るといろいろ疑問も浮かんだ。

琉球舞踊を批評や研究の対照として特化しているわけではなく、あくまで総合芸術としての芸能・演劇の中の重要な要素としてみてきたが、しかし、なぜか創作舞踊なり舞踊劇には関心をもっている。新しい舞台芸術の誕生で、大城立裕先生など、ある面、ワクワクしながら新作組踊を創作されてきたのだろう。

今回第二部の創作舞踊 招待部門がとても面白かった。宮城くわでさ節、野原遊び、いちゅび小、あらの一粒、初春、浦島、の五つの作品が披露された。その中で群舞の宮城くわでさ(7人)、野原遊び(男女8人)、初春(4人)は従来の古典女踊りの編曲風で、また毛遊びの再現の雰囲気。安定した面白さに見えた。新奇でも奇抜でもない。音曲も従来の古典や民謡のアレンジである。浦島(21人?)は眼を見張らせた。竜宮城伝説を幻想的に描いた。舞踊劇の沖縄バージョンである。浦島太郎が玉手箱を開けた後の120歳の翁への早変わりや愛らしい翁のお面をかぶった踊りなど、沖縄らしい温かさに満ちていた。浦島太郎が必ずしも悲劇性をもった結末に終わらないということが大きなポイントだろう。長寿の島沖縄のシンボリズムがそこにあると感じた。竜宮城の踊りは虹色の布を幻想的に使った群舞で韓国の古典踊りの衣装が頭をかすめた。歌のない伴奏曲で群舞が軽やかに目を耳を楽しませた。以前、他の方の演出も見たことがあるが、バリエーションが楽しめる舞踊劇である。

さて今回とても面白いと感じたのは、「いちゅび小」である。金武良章の作品を大湾三瑠が躍った。超がつくほど面白かった。手拍子が入った。解説で宜保栄治郎氏は築サジモ―イだと話した。侍階層による普通のカチャーシーとはまた一味も二味も異なる独創的な踊りであるとの事である。とにかく笑って楽しめた。それにしても金武良章氏に驚いた。大湾さんの個性に拍手!彼は心底優れた舞踊家であり俳優である。沖縄の逸材のお人である。

もう一つ驚いたのは「あらの一粒」である。島袋光裕作品で、なんと大きな琉球舞踊の衣装を着けた人形ケースがドカッと舞台の下手後に置かれる。そして子守の女が背中に子供をおんぶして登場する。白浜節の歌詞がいい。「わんや人の下のあらの一粒、忍で忍びしど人のかなめ」で子守女のさびしい現実が迫ってくる。風車をもって子供をあやす女がふと人形に気がつく。人形がケースから飛びだし四つ竹を踊る。それを見守りやがてまねて踊り出す女がいる。赤子はそばで寝ている。シュールな舞台で、人形が踊り出し子守女がそれに魅了され手真似をして踊り出す。やがて何事もなかったように人形はケースに収まり子守女は赤子をおぶってさる。というような内容で、シュールな面白さでびっくりした。島袋光裕というかつての珊瑚座の軸になった舞踊家に一目おかなければと思った次第である。氏は【草枕】という歌劇も創作されている。是非、再演してほしい。以前琉球大学で真喜志康忠氏が脚本を紹介されていて、台本はあるのよね。辻のジュリと里主のロマンスだが、物語は複雑にからんでいて引き込まれたことが思い出される。

島袋光裕氏の感性の新しさ、そのシュールな舞踊劇に驚いたひと時だった。彼の新しさをまだ現在の創作舞踊は超えていないね!
感性のきらめきはどのあたりに眠っているのだろうか?なぜか私もどなたか琉球舞踊家と組んで創作舞踊を創りだしたいと思った。今後古典も雑踊もまめに見よう!

宜保氏がおっしゃるように戦前、戦後も新しい沖縄芝居や新しい琉球舞踊をたくさん生みだしてきた先達の志に負けている現在かな?舞踊家が歌えばそれは歌劇になるのよね。小歌劇の誕生である!沖縄芸能の創作の可能性は大きいに違いない。今日は思いがけない発見があって良かった!

(大田守邦さんとガァルディさん)

その後フィリピンの演出家・ガァルディーさん(LUTGARDO LUZA LABAD Gardy)を幸喜芸術監督にご紹介してしばしインタビューをしながら照喜名朝一先生や田中英樹先生、玉城秀子先生とも雑談ができたのは良かった。舞踊のリハも見せていただいた。彼はユネスコがサポートしている地域のコミュニティー劇場の中心になって活躍していて、日本の文化庁から研究基金を得て日本の各地域の演劇を取材しているようだ。質問が鋭い。沖縄はアメリカと日本の罠にはまっているね、とのことだった。黒テントさんとの付き合いは長い様子である。演劇活動を通して地域の活性化に取り組んできた男の感性・知性は鋭いと感じた。来年また交流が深まるに違いない。300年のスペインの植民地、60年アメリカの植民地、そして日本による戦争被害・犠生と、フィリピンは複雑な歴史の現在であり、彼らは素早く沖縄の感性に歴史に文化に感応する。日本軍から彼のご両親は山に隠れて生き伸びたという。コスモポリタンの話題では東京こそがそうだと彼は言った。

海外の想像(創造)空間で活躍している知性・感性は世界にアンテナを廻らしているので、視野は広い。沖縄は世界のウチナーンチュの感性についていけない視野狭窄症にならないように研ぎ澄ましたビジョンをまた持たなければね?!

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