ギリシャ神話のお話
心優しいニンフ エコー(木霊)は、美少年ナルキッソスに恋します
エコーは自分から話すことができません
できるのは
話しかけられた言葉の最後を繰り返すことだけ
ゼウスが女神ヘラの目を盗むことに手を貸したため
ヘラの怒りで与えられた罰・・・
ナルキッソスはそんなエコーが退屈です
美しいナルキッソス
彼を愛するものは数知れず
でも彼は誰一人愛しません
復讐の女神ネメシスは
そんな彼に罰を与えます
泉に映る自分の姿に恋をするという
澄んだ泉の水面に美しい姿が浮かび
微笑かければ微笑み返す
手を差し伸べれば
彼もまた自分に向かって手を伸ばす
でも触れようとすれば
水面は波だって
彼の姿は消え去ります
すべてのことを忘れ去り
ナルキッソスは泉から
片時も離れられなくなりました
水面をただ見つめます
食べることも飲むことも忘れ
日に々々体は弱ります
エコーはそんなナルキッソスを見続けて
何もすることができません
ナルキッソスは事切れる前
泉の中のやせ衰えた少年に言います
「かわいそうに・・少年よ!」
エコーは繰り返して言います
「かわいそうに・・・少年よ!」
「さようなら・・・」
「さようなら・・・」
最後にエコーは自分の気持ちを口に出すことができました
ニンフたちは
ナルキッソスを葬ろうと集まりました
しかし・・・
泉のほとりには美しい花が一輪咲いていて
ナルキッソスの姿はどこにもありませんでした
今でも水仙はひっそりと咲きます
水の面をのぞきこむように