緩やかにカーブする道を行くと
懐かしい家が 見えてきた
この家を飛び出してから どの位の月日が過ぎただろう
家は その時のまま 少しも古びていない
変わったのは 私の方だ
この家の雰囲気が重く 息苦しく
そこから逃れようと 自由な世界へと羽ばたいた
あれから
喜びも 苦しみも 悲しみも・・ たくさんの経験をして この齢になった
もう この家に 二度と足を踏み入れることはないと思っていたのに
いつの間にか この場所へと戻ってきていた
「 ただいま・・・ 」
小さな声で 呟いてみた
家は シンと静まりかえっている
そうだった
もう 誰もいる筈ないもの
ドアを開けると
「 おかえり!」
何処からか聴こえてきた 温かい声が
そっと 私を包んだ
私の部屋は
読みかけていた本も 遊んでいた人形も
子供の頃 そのままに