ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

『歌占』。。終わりました

2008-06-21 02:29:47 | 能楽
一昨日に、もうなりますか。研能会6月公演にて『歌占』を勤めて参りました。出来ばえを自分で評価するのは難しいですが、ん~、まあまあ。。でしょうか。あとでビデオを見ましたが、やり過ぎで嫌味なところもあるし、考えていたタイミングを外してしまったところもあるけれど。。よく終演後に襲ってくる、あのたまらない「ダメだ~~っ」っていう後悔までは起こらなかったので、まずは先を見て進もう。

子方を勤めた チビぬえは、声は稽古通り出ていたと思うけれど、座っているときの姿勢や、微動だにしない身体の安定という面ではちょっと後退したかも。稽古でも散々注意されたのだけれど、本人もどうすることもできないらしく、成長の過程で仕方のない事なのかなあ。このへん、ぬえは経験がないのでわからないのですが。。

で、みなさん期待の「まばたき」ですが。(^◇^;)

自分では見事、止められた! と思っていたのですが、録画を見たら。。あら? 登場して橋掛りで謡い出したとたんにパチクリとまばたきしてる。。しかも2回も。それからクセの中で1回、思わずまばたきしていますね。。

まあ、ホントの事を言えば、自分で実際に直面で能を勤めるときに、あらかじめ まばたきの事を話題には出したくなかったのです。そこを注目してご覧になるお客さまが絶対に見所の中にいらっしゃるはずですからね。そしてまた終演後は報告もしなきゃならない。まあ、生理的な、本能的に起きる行為なので、ある程度仕方はないのですが、集中力で、これまた「ある程度」抑えることができる、それは訓練によるものではないから、場面は違えど、集中力があれば誰でもそういう身体的な欲求を抑えることはできる、という事は、直面の曲を勤めるこういう機会だからこそお知らせしたかったのです。

結局は今回はまばたきを連続して止められたのは30分ぐらいになるでしょうか。曲を勤めたその成果とはぜ~~んぜん無関係な話題なんですが、それでも父子がお互いにそれと分かって子方に手を掛けたそのとき、ツツ~~っと涙が頬を伝いました。(;^_^A  チビぬえはそれを見てびっくりしたようです。いやいや、違うよ? 親子の邂逅のシーンに感情移入して自然に涙がこぼれたんではないよ? ドライアイを恐れて本能が自然に対抗したのです。申合では涙は出なかったから、やっぱり能楽堂の空調やらのコンディションは演技に不利な条件ではあったようですが。。

研能会の翌日は、同門の後輩と一緒に、今月末に催される先輩の催しで ぬえが勤める仕舞『三笑』の稽古をしていました。そして今日は伊豆の国市の「狩野川薪能」のお稽古。これからまだまだ大役が続きます。あんまり落ち込まないで次の舞台を目指してゆきたいと存じます。ご来場頂きました方々には、改めまして厚く御礼申し上げます~。m(__)m

ところでその研能会に出勤するのに、はじめて開業間もない東京メトロ「副都心線」というのに乗ってみました。車内は、まあ午後の時間でもあったためかガラガラで。そうして ぬえの自宅からは乗り換えもなく渋谷に到着することができました。こりゃ便利だ。

。。ところが。渋谷の駅地下は、いまこんなになっているのね~。いや、迷った迷った。出口に振られた番号を頼りにあっちへ行ったりこっちへ行ったり。。あれ? なんで行き止まりなの。。? う~~む、この地下で火災が起こったら。。ぬえは逃げ出すことができるだろうか。。そんな事を考えていたら、突然、何やらこの路線のシンボルらしい、え~と、何これ? 虫? の前に出ました。



恐る恐る様子を窺うと。。これはここから下の階に降りるエスカレーターの屋根、なんですね。いまその地下世界。。すなわち南瞻部州の地下にある八大地獄の近所からようやく地上に近づいて、半ベソかきながら日光を求めて彷徨していた ぬえは、今さらまた地下に降りてゆくエスカレーターは、まさに「地獄の釜のフタが開いた」という光景に見えました。。くわばら くわばら。