おい、さぶろう。おまえの前途に美しい大空が広がっているということだけで、丸一日、湧き起こる美しい感動に震えていてよかったのだぞ。おまえ、震えたか。一度だって震えなかっただろう。そんなものでは震えないぞと余所を向いていただろう。そんな当たり前のことは見過ごしてしまうのが賢者だとする自己規定を企てただろう。
わんわん泣き出していてよかったのだぞ。死ねばそれはできない。死ねばもう、おまえの前途に大空が広がっているということはない。しかし、おまえは死ななかった。そして広がった美しい大空の前に立てた。死んでしまってからでないとこれは感覚できないかもしれない。あまりにも当たり前で見過ごしてしまうのだ。そんな普通のことでは泣けないのだが、これは泣いていいこと、泣いて当たり前のことでもあるのだ。
おい、さぶろう。おまえの前途に美しい大空が広がっているというだけで、丸一日、湧き起こる美しい感動に震えていてよかったのだぞ。。わんわん泣き出していてよかったのだぞ。