春眠暁を覚えずというけれど、それは若者のこと。老爺の僕は却って早く目覚めてしまう。瑠璃色の声をした春の鳥が、夜が明けるのを待つようにして、わが庭を訪れ愛の詩を歌う。すると僕はたちまちそれに反応を示して起き上がる。いい声をしている。玉を転がしたようないい声をして、地上を祝福された地上へと展開させる。僕は着替えて外に出る。そしてそこから離れられなくなる。移動椅子を持ち運んで来てそこに掛け、片手に小さな農機具を持ち、伸び上がって来た草を抜き始める。春の草は元気がいい。勢い余ってたちまち蔓延する。これと格闘する。草は庭にも小径にも畑にもプランターにも鉢にも生えている。延々と続いているので、もうここらでいいというふうに投げやりをしなければ立ち上がれない。10時近くまでこうして遊んだ。痛快だった。春の鳥の鳴き声はいつの間にか消えていた。もっとたくさんで歓待をしてくれるどこぞに出向いたのだろう。こうして外に出ているのが何よりも痛快になる時期がやって来ている。これを逃す手はない。抜いた草を運んで行って山を作った。いずれこれが天然の肥料になることだろう。老爺になるとこういうことが楽しみになる。もう恋もしなくてすむようになる。働いてお金を稼ぐということもしなくてすむようになる。ずばり自由だ。呼吸のように自由だ。自らの手の平に乗る分の幽かな生き甲斐に由らしめているだけでいい。
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