有り難い。今夜お酒を飲んだ。飲めるようになった。血液検査の結果、肝臓の数値が改善していた。正常範囲に戻っていた。よすぎるくらいによくなっていた。で、医者の許可が出た。ただし、週に二日はノンアルコールデイを設けることという条件付きで。で、早速、スーパーに走って刺身のパックを買った。禁酒のこの二ヶ月は刺身も食べていなかった。食べると飲みたくなるので。今夜はお祝い。日本酒の熱燗を１合つけてもらった。だが、半分も飲めなかった。４分の１くらいでくらくらした。酔いが回った。嬉しい。健康が戻った。これはでも一日三食前と後と、寝る前にと都合一日に３錠を飲んできた。だから、回復は薬のせいかもしれない。用心が必要だろう。膵臓の値は逆に悪くなっていた。これは気になるところだ。暴飲暴食はするまい。健康で過ごしたい。医者通いはまっぴらだ。老後はそれでなくてさえ手を取るのだから、迷惑を掛けないようにしていなければならない。寝付かないようにしていたい。
兎も角、今日はいい日になった。嬉しい。眼前がぱっと明るくなった。見上げる青空がことのほか美しい。現金なものだ。
おれはこんなに偉いんだぞと威張る。威張るのはよくない。みっともない。でも、威張りたいんだよねえ。威張っている人が多い多い。あんまり多いので、ごろごろしているので、威張り屋さんと威張り屋さんがごっつんこ、ぶつかってしまう。よくあるシーンだ。
争いになる。頭を下げろ、そっちこそこっちに頭を下げろと威嚇する。鼻息が興奮した馬の鼻を呈する。おれはこんなに偉いんだぞの合戦が始まる。詰（なじ）り会う。どっちかがどっちかを恨む。蔑む。やっかむ。嫉妬する。復讐する。遣り手さんでないと生き馬の目を抜くことはできないのかもしれないが。慢心はますます慢心を生む。慢心でぱんぱんに膨れあがっている。
人が居ないところでも威張っていないとどうにもバランスが取れないで、身を揉む。偉い人になるとこうだ。評価を受けるとこうだ。評価に寄りかかる。こうしてたくさんの支えが必要になる。少しでも支えが弱ると腹が立つ。癇癪を起こす。もっと支えろと威張る。強要する。そうやって人生を遣り済ます。
そういう世界から身を退くと老人になっている。そしてそういうことが途端にばかばかしくなってくる。意欲減退を起こして来る。肌つやがなくなる。皺皺になってますます老いる。老いの坂を転げる。威張ろうとしてももう威張れる物などなんにも残ってはいない。どのみち威張るのを辞めるしかない。枯れ木のように枯れていく。これでいい。枯れるのがいい。
いつまでも生木（なまき）ではおられないからだ。人と人との争いはご免だ。争いがないところがいい。威張らなくともよかったんだということが確信されてくる。波が立たない平坦な平凡なところへ進む。残っているのはままごと遊びだ。砂遊び土遊びの類いだ。そこにしゃがみ込んで無言で無心になって遊ぶ。そろそろ春の陽気。北風も止んで、畑もぽかぽかしてくる。
おはようございます。切り干し大根作りに熱中しています。「ええっ、そんなにたくさん作ってどうするの？」と周りをやきもきさせています。包丁を握って大根をまず１０ｃｍほどに輪切りにし、それから皮剥きをし、それを薄く薄く２ｍｍほどに切ります。これを干し網に列べて、ベランダに吊し大陽に乾燥させてもらいます。２週間後には完成します。出来上がったら、親しくさせて頂いているあの方この方に差し上げます。わたしが好きな工程は包丁を握っている工程です。とんとんとんとんと夜の更けるのも忘れて無言で、無心に、やっています。まったくの単純作業なのに飽きません。根が単純に出来ているのでしょう。大根は我が家の畑で栽培したものです。人様にもお分けしたのですが、それでも青首・白首、ビタミン青菜大根、赤大根が残っています。そろそろ薹が立ち始めます。すると中身が変身してしまいます。そうならないうちです。まだ大根漬け・白菜漬けはできません。ノウハウを知りません。次はこれに挑戦をしてみようかなあ。世間のことにはほぼ無関心・無欲な老爺になって、こういうことが楽しみになります。
