この頃不意に思ったこと。
この世を去った死者は、先へ行きたいのではあるまいか。先へ先へその先へ、明るい光の射し込んでくる方へ、ずんずんと進んで行きたいのではないか。
それを呼び止めていいものか。
この世に残っている者が手を挙げて呼び止めて、懐かしがっていたら、足が鈍ってしまうのではないか。
弟のことを僕はよく思い出している。懐かしがっている。詩にも書いている。
そうしていたら、振り向いてしまうんじゃないか。先へ進んでいけないのではないか。
・・・などということを、このごろよく思ってみる。
もしそうだとしたら、すまないことをしているなあ、と。
☆
死者は極樂へ進んでいるのだ。光の溢れるところ、智慧のあふれるところへ、進もうとしているのだ。阿弥陀仏が、こっちだぞこっちだぞと手招いているのだ。仏典にはそう書いてある。
しかも、極樂は終着駅ではない。そこは新たな出発点でもある。旅は永遠に続いている。
魂が暮らしているのは、地球の生活だけではないのだ。