花は一年に一度しか咲かない。あとの期間は生殖をしない。子孫増殖活動をしないで、みずからを豊かにすることに専念する。そしてまた花の季節に照準を当てる。
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庭の牡丹が咲き終わった。芍薬が咲き終わった。新しい若葉の葉っぱをゆさゆさ茂らせている。
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ところで、植物はどうしてものを言わないんだろう? 自己表現をしないのだろう? 「わたしはシアワセよ」を言わないで過ごしていられる植物たち。「美しい大空だなあ」と他者を賛嘆したくならないだろうか?
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花が百話に値しているのだろうか? それとも聞くことに集中しているのだろうか? 神様の声を聞くことに。虫の声を聞くことに。人間界の声を聞くことに。発話しないでひたすらに聞く。もしそうであれば? 彼らは瞑想の達人になっているはずだ。