アンティークマン

 裸にて生まれてきたに何不足。

流氷やーい!自然現象に、人は無力 

2009年03月11日 | Weblog
  ペンギンにもその日の気分ってものが

 父親は、日華事変(日中戦争、支那事変とも呼ばれている)、ノモンハン事変に出征していた。そのとき、チチハル、ハルビンへ行っていた。よく聞かされた話が、「黒竜江」の話。ユーラシア大陸の北東部を流れオホーツク海のアムール湾に注ぐ川。長さが世界8位。アムール川という呼び名もある。

 オホーツク海の流氷は、この黒竜江(アムール川)からの流水により塩分が薄くなった海水が氷結して形成される。父親が、戦地で見た黒竜江の水が、結氷してオホーツク海で流れ出し、日本に接岸する。これは見ておかなければならない。

 日本で流氷を見る観光基地は、オホーツク海に面した紋別市と網走市。紋別市には、砕氷観光船「ガリンコ号Ⅱ」があり、網走市には、「おおろら号」がある。
 「ガリンコ号Ⅱ」で流氷を見るツアーに、参加した。午前7時、バスで札幌出発。参加者は、日本全国から集まっていた。この日は、奈良や名古屋からの観光客が多かった。紋別、網走へ入るルートは、女満別空港、オホーツク空港を利用することも出来るが、新千歳空港で降りて札幌に泊まり、バスで行くのが主流の様子。

 冬の北海道の観光…スキーは、完全に衰退。営業しているスキー場も、「スノーボードが半数を占めます」という状況。そんな中、元気いっぱいなのが、「旭山動物園」。冬の最中(さなか)に、1日の観光バス560台というとてつもない記録を打ち立てた。1台のバスに、40人乗っていたとして2万2千人以上。この数には、マイクロバス、自家用車、タクシー等の客はカウントされていない。どうして、冬に北海道の動物園へ行かなければならないか?「ペンギンが散歩する」からです。日本人は、いつからペンギン好きの国民になったのか?とにかく凄い人気。

 「ペンギンって、お行儀よく並んで道を歩くんですね」と感心しているおばちゃんがおりました。それは、違います。バラバラに歩きたくても、道の両脇に観光客が壁を作り、カメラのフラッシュをたいているので、道の中央付近を並んで歩くしかないのです。
 ペンギンにも気分ってモノがあり、歩きたくないペンギンは、ペンギンの家にいるのです。そのため、行進するペンギンの数は、その時間帯によって変わります(1日に2回行進)。つまり、極端な場合「行進に参加するペンギンがゼロ」ということも(これまではなかったけれども)考えられるわけです。どうしてこんなにペンギンの生態に詳しいんだろう?
 昨秋、オオカミの森をオープンし、3頭のオオカミを入れました。1頭が仲間に喰い殺されてしまいました。野生の状態に近いように飼育しているので、ボヤボヤしているオオカミはやっつけられてしまうわけです。このように、自然な形で飼育するのが旭山動物園の人気の秘密なのでしょう。

 ツアー添乗員氏によると、「北海道観光は、旭山動物園の名前を入れれば売れます」ということでした。つまり、「旭山動物園と流氷観光」、「旭山動物園と、富良野のラベンダー」のようにすると間違いなくヒットする。
 旭山動物園関連で低迷しているものがあります。それは、映画、「旭山動物園物語 ~ペンギンが空をとぶ~」です。監督はマキノ雅彦、主演は、の西田敏行(園長役)。どうして興行成績が低迷しているか?「おくりびと」に圧倒されているそうです。タイミングが悪かった。

 さて、そうこうしているうちに、4時間経過。紋別に到着。眼前に広がる青い海!
 そりゃ良かったね、晴れていたんでしょう!という声が聞こえてきそうですが、「青い海」ということは、流氷が「ない」ということ。「白い海」でなければなりません。(腹を立ててもしょうがないが、旅行会社は、前日流氷が沖合30kmへ去っていたことを知っていてこの日のツアーを敢行したフシがある。この点を追及すると、「風向きが変われば戻ってくる…」と、言うでしょう)

 待合室で放送がかかった。「本日流氷は、沖合40kmの所まで流されております。ガリンコ号Ⅱは、そこまで行けませんので、料金3,000円の所、2,500円にします」 奈良県や愛知県からの観光客が、札幌からの往復8時間バスに揺られて…お目当ての流氷がない。500円をおまけしてもらっても…
 拗ねていてもしょうがないので。ガリンコ号Ⅱには、一応乗船しました。紋別くんだりまで来て、流氷のない海を遊覧してどーする。と、ふてくされていたら…
 
 2月に押し寄せた流氷が紋別港内に入り込んだ。数日前からの強風で、流氷は港から出て遙か彼方へ去った。ところが流氷にも、色々な奴がいて、港から逃げ遅れた奴がいた。ガリンコ号Ⅱは、港の隅の逃げ遅れた流氷に突入し、ガリンコ、ガリンコと音を立てた!流氷を諦めていた観光客がこれに興奮。船中沸き返った。単純な客たちだこと。

 相手は自然現象。出て行く流氷を引き留めることは出来ない。ペンギン見物だって、寒い中を場所取りして待っていても、行進に参加するペンギンがゼロということもあり得る。日頃、徳を積んでいる人でも、自然界の御意向にはなすすべがない。
 父親も触れたであろう黒竜江の水に、ちょっとだけ触れることが出来たので良かったとするか…。8時間もバスに乗っていたもので、腰が痛いわ。