アンティークマン

 裸にて生まれてきたに何不足。

先生は叱る…でも、教えなければ

2014年07月14日 | Weblog
 小学2年生の社会科見学の引率(のサポート)を頼まれました。
 「野生の証明」のような児童が数人いる学級担当。一番大変なのが、ADHD(注意欠陥多動性障害)のU太くん(仮名)。なにしろ、家族でお祭りの縁日へ出かけて、迷子になり警察に補導された。…縁日は校区の目抜き通り、つまり勝手知ったる道…そこで迷子になったことで一躍有名人に。いきなり車道へ飛び出すなど、危機一髪の経験多数。その子に密着してほしいと…。

 いやしくも、児童心理学の大家(大過ではない)であり、実践家である私にとって、ADHDの子を2~3時間面倒を見るなんて、朝飯前。U太は、社会科見学の間中も私の手を握り、ほかの子が私に近づくと威嚇して追い払っていました。
 どんな手法を使ったのかって?学校から、目的地である、「JRの駅、バスターミナル」までの道すがら、「テレビでやっていた水戸黄門の主題歌」を、ずっと歌っていただけなんですけどね。数回歌ったところで、私の周囲10人ほどの子ども達の大合唱となり…「♪…人生楽ありゃくもあるさー…」異様な集団と化していました。
 ADHDには水戸黄門が効くのかって?歩きながらの場合は効きます。

 さて、定年間近と思われる女性教員も引率しておりましてた。帰途で小走りに列から離れた女子児童に、この老女教員が言いました…
 「列を乱したら給食(を)食べさせないよ!」
 この言葉に児童がどんな反応をしたか?私は、児童心理学の看板を下ろそうかなと思うほど驚きました。全く予想外の言葉…。老女教員に対して児童たちは…
 「どうして、こんなことぐらいで給食を食べさせてもらえないの?」
 「信じられない」
 「おかしいんじゃないの?」
 びっくりしました。反抗なんてもんじゃない。バカ扱いですよ。これだもの、私に、「引率の補助」を頼まなければならない。私と手をつないでいるU太くんまでも…
 「バカでねんだ(バカじゃなかろうか)!」と。

 私は悪いとは思いつつ、老女教員の横顔を盗み見ました。彼女は児童の反抗にお手上げ、鳩が豆鉄砲を食らったような間の抜けた顔をしておりました。

 夏目漱石の先生論に…
 「叱る権利をもつ先生はすなわち、教える義務をももっている」
 「先生は規律をただすため、秩序を保つために、権利を十分使うであろう」
 老女教員は、権利を行使して、叱りました。しかし、教えなかった。教えないから、規律も秩序もただせなかった。

 先生は教えなきゃね。心配なのは、教えるにも叱るにも、「先生の技量、人間性」が問題なわけで…