アンティークマン

 裸にて生まれてきたに何不足。

カキノタネはマグロだった!

2011年07月08日 | Weblog
 出世魚といえば、ブリ、ボラ、スズキ、マイワシと相場が決まっている。
 スーパーの鮮魚売り場で、「メジ」を発見。数人の買い物客が集まった。「メジって何?」と言う声が上がり、見知らぬ同士が盛り上がっていた。そこへよせばいいのに、私が口を挟んだ。「メジはマグロの子。マグロも出世魚なんですよ!」と、言ったところ、「何を言い出すやら…」という視線。折角、無料で新しい知識を教えてあげているのに…!
 出世魚決定機構(あるのか?)の決め方とは違うかも知れないが、「成長に伴って呼び名が変わる」と、いうことでは、マグロも立派な出世魚なのです。

 秘蔵の「本朝食鑑」には・・・「…二、三尺を『目鹿』、四、五尺を『真黒』、七、八尺以上を『鮪(しび)』と呼ぶ…」と、書かれています。元禄時代からすでに出世魚として知られていたことが分かります。

 現在は、「ヨコワ」→「メジ(北日本ではゴンタとも)」→「中坊(または小マグロ)」→「マグロ」という名前の変遷を辿ります。

 縄文時代の貝塚からマグロの骨が出土していますから、日本人発生当初からマグロを食べていたことが解ります。古事記や万葉集にも、「シビ」の名で登場しています。古語辞典に、「しび『鮪』…マグロの大きなもの」と出ています。
 我が家ではマグロはヅケにしていただきます。「冷凍ならともかく、高価なものをヅケにするのはもったいない」という見方もあるようですが、ヅケにすると旨みは一層上がります。古人の智慧であるヅケは、単に保存の意味ではなく、味が良くなるものでもあったのです。  

 マグロは、古くから日本人に身近にあった魚だけに、その呼び名の多さも日本一ではないかと思います。いや、日本一でしょう。

 アイウエオ順にしなければならないほどの数の多さ!
 イモシビ、ウシシビ、ウメゾメ、ウラマワリガツオ、オオシビ、オオタロ、オオマグロ、カタマ、カンバ(大阪で獲れるマグロ?カンバ大阪なんちゃって!)、クロ、クロシビ、ゴトウ(後藤さんがの命名か?)、ゴトウシビ、ゴンタ(たぶん漢字で書くと権太)、ゴンダ、サンダ、シビ、シビツ、シビツユ、セナガ、デンボ、デンボク、トウツケ、トヨマ、ニンダ、ハツ(心臓か!)、ホンシビ、マゴロ、ムツ(六つ?)、ヤツ(八つ?)、ヨカゴ、ヨツ(四つ?)、ヨツワリ。 

 まだ若いマグロの呼び名は、カキノタネ(カ、カキノタネはマグロだった!)、コシビ、コチウ、コビン、コメジ、シビコ、シンマエ、マメジ、メジ、メジカ、メジカッコ、メジマグロ、ヨコ、ヨコワ…。

 マグロには呼び名が多い。だからなんなんだって?深い意味などありゃしない。 私がスーパーの鮮魚売り場を和ませようと、「マグロ出世魚説」を開陳したのに、疑う輩がいたものでつい…。